「過去との和解」と過去との邂逅と。

 この作品に、出会えて良かった。そう思える一作。
 「過去との和解」をテーマに描かれる短編三部作の内の一作。
 やはりこの作者様が生み出す空気感は、言葉では言い表せなかった。
 ノスタルジック・ファンタジーの巨匠、恩田陸さんの初期作品に匹敵する世界観を描ききっている。その言葉の選び方とか、言葉の並べ方とか、とにかく最後まで研ぎ澄まされていて、凝っている。
 主人公は電車で旅をする。主人公が持っていた空色の切符は、「どこまでも行ける切符」だった。しかし少女に導かれるまま下車し、神社に迷い込む。そこは過去との邂逅の場所のように感じられた。多くの人が亡くなったことで建てられたであろう、文字の読めない石碑。左手で結んだ赤い紐。全てが示唆的だった。そして、全てがラストにつながる伏線でもあった。
 再び乗り込んだ電車。
 果たして、少女は――。
 胸に迫りくる切なくも悲しく、そして主人公が秘めた温かな想い。
 
 絶対にこの三部作は読むべきだ。
 是非、是非、御一読ください。

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