とても良質な怪奇譚。最後までぞくぞくさせてくれます。

『普陀落渡海(ふだらくとかい)』。もしご存じない方は、ちょっと調べてみて欲しい。この日本に於いて、あまりにも恐ろしく哀しい行いがあったことを知るだろう。

この物語は、そんな『普陀落渡海』をベースとしている。舞台は、伊豆諸島の外れに位置する日子島。
若き学者の卵、橘川と立花とは漁船をチャーターして日子島に上陸する。水源がないため暮らすことが不可能な無人島だ。故に殆んど人の手が入らず、未知の資源や生態系の宝庫である可能性が高い。殺伐とした島の景観は、むしろ彼らの射幸心をくすぐることになる。
橘川と立花は照り返す太陽のなか、石や昆虫を観察しては採集していく。そんな中、妙な『人影』があるのを彼らは目撃してしまう…


舞台背景がとても丁寧に語られるため、違和感なく物語に入り込むことができます。最後まで途切れることのない緊張感が、貴方を誘うことになるでしょう。

『ホラー』というより『怪奇譚』。いや、もしかしたら『神話』なのかもしれません。

オススメです!

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