第7話  作品の出来が余りにいいので、原作知らなくても書ける(キリッ

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作品の出来が余りにいいので、原作知らなくても書ける(キリッ

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続き!


Kanonという作品は、前回もあげたようにこのような特性をもっていました。


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理由1.原作終了後にすればストーリーが知らなくても書ける!

理由2.無個性無設定主人公なので、逆に好きに改変できる!

理由3.現代学園なので、下調べの知識が知らなくても書ける!

    多少のファンタジー要素は、改変要素として流用できる!

理由4.キャラが分かりやすいので、二次創作を見ただけで書ける!

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そう。原作のストーリーも、設定も、世界観も、キャラも。



『原作を深く理解してなくても、ある程度書けてしまう』のです!


(正確には、描いても叩かれにくいのです)



エヴァや月姫みたく設定資料集や製作者の発言や、それにまとわりついたユーザーの各種うんちくや考察を読み漁らなくてもいいのです。なんかサラッと流した程度のプレイヤーでも書けます。


いや、ハッキリいいましょう。



『原作全くやってなくても書けます』



書けてしまうんだよなあ……。


優れた二次をある程度見ればね!

優れた二次は、キャラの伝え方が上手いし、原作知らない人にも楽しめるように書いてありますから。



『原作知らないけど、キャラと世界観と設定とストーリーは大体知ってる』



こういう状態に、なれてしまうのです。

二次を超読み込んだ人なんか、下手すると、そこらの原作プレイヤーより原作に詳しかったりします。


特に、キャラと世界観ですね。世界観を外さず、キャラが書ければ、大体書けるので。

ストーリーはまあ自分で適当に、キャラとキャッキャウフフかTUEEさせとけばいいので。

そして、世界観は現代。キャラは記号化&主人公は改変自由と。


まあ、そういうわけで。Kanonは……素人にとって、あまりにも、あまりにも、書きやすすぎました。



『書きやすい』ということは非常に大事です。

前話までも、何度も話しました。「書きやすい設定」を求めて、如何に文化が変異したか。



そして、書きやすいということは、実際に書くやつが、出るということです。



『原作知らずに書く?それって、二次界隈的にありなの?』



いや、文化的つーか、倫理?的にはありなわけないですよ。

なしですよなし。今も昔もそうです。

なしに決まってんでしょ。


つーかやってないつーことは、原作を持ってないってことですから。

原作あっての二次なんだから、そもそも『買えよ』って話です。


しかし、そんな倫理には多少の拘束力しかありません。

作者さんたちはどっかのギャングよろしく

『書きたい』と頭のなかで思ったときには!既に行動は終わっているものなんだ!です。



というわけで。



『原作やったことないけど、二次書いちゃえ』文化。



が、花開きました。

花開いてしまいました。



勿論、原作やってません!なんて公言すると叩かれますが、自分から公言しなけりゃまあ基本バレません。読者も一々、特に致命的ミスがあるわけでもない作品に『原作やったことあるんですか?』とか超失礼なこと聞かないし。


『バレなきゃOK』の世界です。


そして、Kanonはとてもバレにくい。それに、さっきもいったけど、二次をめっちゃ読み込んだ人は、下手な原作プレイヤーより原作に詳しいし。

あと末期になると、逆に改造しすぎて、原作やったことあるの?の突っ込みが、虚しくなるので。



ちなみに、そのKanonSS、大体どんな感じかというとですね。

可愛い女の子に、なんか好物をねだられ、いちゃいちゃドタバタしながら終わるような話とか。

斎藤君や久瀬君とかいう、男モブキャラをやられ役として倒して、きゃーかっこEーされて終わるとか。

そういうのです。


一例を出すとこんな感じ



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ー初期ー アフター&ハーレムor個別&ショート中心


祐一「ほらあゆ、たい焼きを買ってきたぞ~。やらんけどな!」

あゆ「うぐぅ~。祐一君がボクをいじめる~」

名雪「祐一~。性格悪いお~」

祐一「うそうそ。冗談だって。ほらよ」

あゆ「祐一君……♡」

真琴「あ~!あゆだけずるいー!あぅーっ。私にはないのー!?」

 いちゃいちゃ&ドッタンバッタン



ー末期ー 魔改造全部のせ主人公+設定改変+中長編中心


祐一「俺は相沢祐一、17歳、人間の男。使用武器は神剣ラグナロク。属性は無。

二つ名は輝く聖剣士(シャイニング・セイント・ソルジャー)で、ランクはSSSより強いMだけど面倒なのでB」


名雪「何を一人で言ってるんだおー。今はランク測定の練習試合中だおー」

祐一「ぐはっ、また口に出してしまった」


祐一「いきなり決めるぜー。最上級魔法「テラフレア」」

Aランク(斎藤君)「うわー。Bランクのどこにこんな力がー」

女性「祐一さん・・・ぽっ」


オリキャラ「そんな下らん試合なんてしている場合じゃないぞ。SSランクの魔族が攻めてきたぜ」

祐一 「SSランクか。暇つぶしにはなりそうだぜ。戦闘だ!」

  ※ニコ動大百科。U-1について語るスレ、レス9より引用とやや改変


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言うまでもないですが、Kanon原作にランクもないしFF的な魔法もないし、SSとかの魔族もいないです。


しかしあれですね、この



『実力を伏せた最初から超強い主人公が、無名で学校の入学試験で活躍して、女の子に惚れられて、話が進むと学園を襲う魔物とか危機を撃退してひたすら俺TUEEする』



のは、既に何かしらの様式美を感じますね。

そう、なろうで死ぬほどみたパターンですね。

筆者はこの頃から死ぬほど見てました。

もう18年前なのに。歴史は繰り返す。



『気づいたら思考が漏れて独り言を喋ってる主人公』とかもね。



くどいですが、これはなろうの累計作品ではありません。これはKanon?の二次?です。

二次かなあ。


というわけで、最初に言ったとおり、「なろうの文化は、なろう独自のものじゃない」というのは、ここらからも証明できると思います。今までも散々言ってきてるけど改めてね。


これ系のTUEE作品なんて、ずっと、ずーっと人気なんですよ。

何十年も前からね。

俺TUEEが最近の流行り……とかいう発言に、苦笑いを返したくなるのはこういうとこです。



しかしまあ、この手の作品は、すっごい流行りました。

バンバン流行りました!


俺TUEEとハーレムは昔から大人気!



これを読んでる人の中にも、原作未読未プレイにも関わらず、なんらかの二次創作を素知らぬ顔でやった人はいるんではないでしょうか?^^

割りとかなりの人気作家の中にも、いたことだけは記憶してます。


白状せよ。



……まあ、気持ちはわかります。上の見て「書けそう」って思う人は何人かいるでしょう。特にもはや原作なにそれの魔改造のほう。まーラブコメのほうも、キャラさえ押さえれば簡単か。


それに、筆者もKanonは二次SSで知り、原作を知らないままに「原作知らんけど書けそう」「知らんけど書きたい」まで来ましたから。原作知らないのに二次読むの?と言われるかもですが、そんなこといっても、だって面白い作品は原作知らなくても読めてしまうんです。

すんでのところで、ちゃんと購入してプレイしましたが……(そして涙ダバダバしました)。



さて、そんなわけで

『原作知らないけど、キャラと世界観と設定は大体知ってる』という勢力により『原作知らないけど二次書いちゃえ』文化が開花しました。

流石に、過半数を超えたりするほどではないと思うけど。

でも、彼らの中にも、確かに面白い作品を書ける人はいたのです。


すると、彼ら自身が、また新たな彼らを産む材料になるんですよ。



その流れはこんな感じです。



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『書きやすそうな面白い二次創作を見ただけで、特に原作を調べずそのコピーを作り

 そんな作者が大量に湧き出ることで、テンプレ二次創作となり、

 そのテンプレ二次を参考に、テンプレ二次コピー作品を書く作者が現れ

 そのテンプレ二次コピー作品を元に、またテンプレ二次コピーのコピー作品を書くやつが現れ

 そのテンプレ二次コピーコピー作品を元に……』という流れです。

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まあ、コピーといっても、魔改造の流れで話したように、本当に完全コピーというわけではなく、アレンジがはいって、少しずつ変化はして行きましまけとね。

テンプレアレンジを元に、さらにアレンジが産まれる、と表現するのが本当は正しいです。

ただ、大きい流れ的には、似たようなもんです。



さて、この『原作知らないけど二次書いてやるぜ!』文化……。




これは、創作界隈に、誰も予想だにしない衝撃を与えました!




また衝撃か。

そろそろ振動で地面が消滅しそう。



ま、それはそれとしてですね。


それまで、創作物というのは、妄想を形にするとはいえ、リアリティを増すためにですよ。

なにかしらの下調べなりなんなりがあり、勉強なりしてからやるもの、だったのです。


SFしかり、ミステリーしかり。ファンタジーしかり、です。

SFを書きたかったら、ある程度の科学知識を調べてから書く。

二次を書きたかったら、原作をやってから書く。そういうものです。


前話で筆者がいったことを思い出してください。このころは、創作物といえば、プロのものをさしたことを。

そして、プロの創作物は、どんだけハードルが低いものでも、編集者や、コンテストを通ってくることを。

下調べや知識がないものなんて、知ってる人が見れば一目瞭然。ウケるはずがない以前に、通るはずがない。

つまり、資料を元に作品を書く、というのがスタンダードということです。



しかし!ネット上のアマチュア作家にはそんな誰かの許可とか一切関係がありません!


「下調べなくても、これなら俺にも書けそう」と思ったら。

既にその行動は終わっているのです!


そう考えて、一石を投じるわけです。



『資料を・参考に・創作物を書く』ではなく……


『創作物だけを参考に、創作物を書く』という隕石級の一石を!


名付けて「資料・参考・創作文化」からの

    「創作・参考・創作文化」。


頭文字をとり「SISS文化からのSOSS文化」と……。

いや、名付けなくてもいいんですが。





これがぶっちぎりでやりやすかったのがKanonであり、そしてこの『創作参考創作文化』こそが、Kanonが爆発した最大の理由です。



Kanonは余りにも「原作を知らなくても書きやすい条件」が揃っていたために。

「原作を知らなくても書く勢力」を大量に生み出しました。



1万件以上のSSが産まれたのは、間違いなくこれ(SOSS)があったからです。



そしてもちろんですが、リリカルなのはや、ゼロの使い魔や、ネギまあたりもこのケースに見事当たってます。

筆者は、なのは原作は見たことなかったけど、二次はたっぷり見たので、主要キャラと序盤のストーリーは大体覚えました。

ゼロ魔も、見てないけど序盤はソラで言える、という人はたくさんいたんじゃないかな~。

ネギまも同じです。そして、それらも原作知らずに書く人は、やはりたくさんいたのです。



中でもKanonは、その文化拡大の最大の貢献者であり、被害者でもありました。



資料とは……図鑑や外部資料をさすことにあらず!

過去にある、大量の創作品。

あるいは、今目の前で読んでる創作品。それこそが資料!



例えるならサッカー漫画を書く時に、リアルサッカーを調査して書くのではなく。

『サッカー漫画を資料として、サッカー漫画を書く』感じです。

創作文化が煮詰まってくると、このような流れが起きるんですね。




これが【創作参考創作文化】です。

資料参考の流れとは明らかに違います。



というわけで、これが、Kanonが何故、爆発的に作品数があったか?

という疑問の答えであり。



Kanonもう1つの闇。



二次創作作家を大量に生み出し、

『創作参考創作』ーSOSS文化の、実態でした。



そして、もちろんですが……。



当然のように、これも、一次創作文化。

つまり、今のなろうにもバッチリ受け継がれていくのです。



いわゆる『テンプレ作家量産文化』に。




そして、それこそがなろう隆盛の理由でもあります。


やはり、Kanonを語らずして、ネット小説は語れない!





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テンプレは良い文化!

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さて、二次創作界隈では、そういう『創作参考創作文化』があったことを話しました。


そう、これは徐々に徐々に一次創作にも勢力を伸ばしていきました。

まさに、業界に波紋を起こしまくる、隕石級の一石だったのです!

その一石は、原作読まずに書くという、迫害された(当たり前)少数派を、いつの間にか、一次創作にも侵食し……そしてそこでは多数派にすら変えていきました。



一石がでかすぎませんかね。生態系変わっとるやんけ。



テンプレ文化とはどういったものか、その流れをもう一度確認しましょう。

こういう感じでしたね。


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『書きやすそうな面白い作品をみて、特に深く調べずそのコピーを作り、

 そんな作者が大量に湧き出ることで、テンプレとなり。

 そのテンプレ作品を見ただけで、自分も書けると思い、

 テンプレ作品を参考にテンプレコピー作品を書く作者が表れ、

 そのテンプレコピー作品を元にまたテンプレコピーのコピー作品を書くやつが現れ、

 そのテンプレコピーコピー作品を元に……』という、今も続く無限ループ文化。

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どっかで見たような……って、Kanon二次が流行った流れまんまやんけ!


はい。まんまです。二次はこんな感じでしたね。


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『書きやすそうな面白い二次創作を見ただけで、特に原作を調べずそのコピーを作り

 そんな作者が大量に湧き出ることで、テンプレ二次創作となり、

 そのテンプレ二次を参考に、テンプレ二次コピー作品を書く作者が現れ

 そのテンプレ二次コピー作品を元に、またテンプレ二次コピーのコピー作品を書くやつが現れ

 そのテンプレ二次コピーコピー作品を元に……』という流れ。

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一緒ですね。


そういうことです。


テンプレ文化の本質は、単に、ウケたものが流行る、というだけでは……ありません!




『創作物だけを参考に、創作物を作る』という内部再生産の無限ループ!


   これこそがテンプレ文化の真の姿!


『特定原作のない二次創作の連鎖』といってもいいかもしれません。




そんな素人みたいな文化が何故流行る……という声が聞こえてきそうですが、それに対しては、素人だから流行るとしか言えません。



しかし!


現実とは分からないものです。



この「原作知らんけど二次書きました」という闇でしかないところから始まった「創作参考創作文化」が、KanonSSの隆盛を決定づけたばかりか。


さらに「小説家になろうの隆盛」にもつながってるのですから。




そう、今現在のなろうの隆盛……。


2018年1月時点で、1200作品以上という書籍化タイトル数を誇るなろう。

  ※最新データ知ってる人は教えてください


そして、数々の『名作』を生み出す要因は!



この『テンプレ作者量産文化』……。


『創作参考創作文化』にこそあると筆者は断言します。





ついに、テンプレ文化が、否定どころか肯定される所まで来ました!




テンプレコピーは善の文化?


一体なぜそういうことがいえるのか?





次あたりで、これまでの歴史を振り返りながら、


これまで触れてなかった、なろうが勝ち組になれた、最後の理由に触れるとともに、


なろうが覇権とった理由をまとめて終わりにしたいと思います




なろうを批判する人は、たくさんいますが。

なろうが成功した理由を語れる人はほぼいない。



その中でも、誰も語ることのなかった、最大の理由を説明しましょう。



テンプレたちが善の理由、そして

なろうが勝ち組になれた最後の理由とはなにか?





続く!












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