第2話  ぼくがかんがえたさいきょうのしゅじんこう〜魔改造主人公爆誕!〜



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 ぼくがかんがえたさいきょうのしゅじんこう

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さて、先程は「ハーレムにしないと逆に皆不幸になる問題」により

ハーレムが受け入れられたという話をしました。


しかし、ここではまだ完全な解決ではありません。

何故なら、Kanonは現代日本であり、

現代日本で「重婚」は違法だからです。

皆に祝福されない結婚は、幸せじゃない……。

そこで、作者達は考えました



じゃあ「重婚許可」の世界にすればいいじゃない。



これにより「原作改変」が同時にスタートしました。



これについて補足を。

実は、初期の二次創作では『原作』というのは、神でした。

いわゆるゴッド。いや今でもそうだけどね。もっと神聖だった。


ストーリー改変など言うに及ばず、設定改変も怒られました。

キャラ改変なんてもっての他です。

ちなみに「そういう空気」なので「アフターもの」と呼ばれる

原作が終わった後の世界を描くものが人気でした。

あるいは、原作の合間を描写するタイプのものです。

どちらも原作の邪魔をしないので。


  ※ちなみに今はどちらも絶滅危惧種です。

  そもそも、昔はSS(サイドストーリー、ショートストーリー)のごとく

  二次創作といえば短編が多かったのです。今は長編だらけですが。



しかし、ハーレムを断行しようと思ったら原作の設定改変せざるを得ない。

ちなみにこれは「秋子さん」という、割りと「了承」で何でも通すという

謎の詰まったキャラに「国会に働きかけて法律かえた」という感じで通す話が多かったです。

「了承」というワードを聞いたことがあるかもしれません。

 ※またどうでもいいですが、この秋子さんで人妻属性を

  開拓されまくった人もたくさんいました(なお攻略キャラではありません……)。



まあ、これは法律変わったことに、ジョーク的に理屈つけただけです。

しかしこれは「設定改変」に加えて「キャラ改変」でもあります。

でも「誠実さ」を通す物語のためには致し方なし!


『原作改変』が、徐々に徐々に許される空気が浸透していきました。



そしてそれは、主人公にも当然及びます。



なんせ本来は1人のヒロインを救うので一杯一杯なところ、

5,6人を救わないといけないのです。

原作より遥かに活動的でコミュ力も高く能力の高い、

スーパー祐一君が登場します。



「主人公改変」……その流れです。



しかし、これはどちらかというと、別作品で解説したほうが分かりやすいでしょう。


先程、原作が不幸であるほど、二次創作は熱が入りやすいといった話をしました。

女の子が可愛ければさらに入ると。


そして、この時代で、原作がとても不幸で、女の子が可愛くて、

かつ大人気の作品がありましたね。



そう……『エヴァンゲリオン』



社会現象にもなった、超有名作です。



これも、二次創作界隈に非常に強い影響を及ぼしました。


言うまでもないですが、原作は不幸ラッシュです。

アスカもレイも、大人気キャラでありながら碌な結末を迎えません。

主人公たるシンジ君も、同様に不幸(というかよくわからない)な結末を迎えます。

まあ、ハッピーエンドにはほど遠いですよね。


また、レイとアスカもなんとか幸福にしたい!

そんな強い魅力をもったキャラですね。

魅力あるヒロイン+不幸な結末の原作は、強烈な二次人気を得やすいです

つーか、女キャラに人気ないと、原作人気が高くても

あんまその二次創作って流行りません。スラムダンクとか。

うーんこの欲望のわかりやすさ(腐女子向けは除きます)。



これも、なんとかして幸福にしてやろう!という勢力が大量に存在しました。



しかし、祐一くんの場合は、たくさん同時だから大変とは言え、

1つ1つは一般人でもこなせるものでした。

能力的に無理なことは1つもありません。

また、エロゲー的主人公なので、個性があるといっても無個性に近く、

ある程度は好きに属性付けができました。



しかし、エヴァのシンジ君は違います。

ゲームではなくアニメなので元から強烈な個性があり……。

しかも、どっちかというとマイナスの面も強くでた個性です。

この原作を忠実に守っては、中々不幸な原作を覆すことはできません。


しかし、原作は覆したい……!そのためには「強い」シンジくんになってもらわねばなりません。

しかも半端な強さではなく、並み居る強敵をちぎっては投げるような、シンジ君です。


こんな作者の(読者の)願いにより、生まれたのが「スーパーシンジ」。

凄まじく強い能力を付与された、通称、スパシンと呼ばれるジャンルです。




色んな設定がありますが、非常に受けたのは「逆行もの」というジャンルです。



「逆行もの」とは何か?



それは、アニメや映画ラストまでいったシンジ君が「記憶をもったまま」

最初の瞬間に戻り、全てをやり直すというストーリーのものです。

さらに、能力も引き継ぎ、意志も全てが強化され、

初号機には自分から堂々と乗り込みますし

初っ端からシンクロ率100%以上を叩き出し、使徒の弱点は出会う前から知ってます。

そんな感じで、未来知識と未来性能と、追加されたいろんな性能を駆使して

原作をハッピーエンドに向かわせるわけですね。非常に爽快です。



ここまでは、まだ自然な「お、上手くやったな」的な発想ですよね?

いうても性格はほとんど原作のシンジくんだし、

エヴァのラストは、遺伝子のプールに溶け込み何が何やらよくわかりません

そこから過去に戻っても、ありっちゃあり、の範囲でしょう


ちなみにこれは、今で言う「ゲーム世界転移」や「漫画世界転移」と

非常に似た属性を持ちます。

未来知識を元に、約束された不幸から回避するために頑張る。

こういうところから、流行の種は生まれてくるんですね。

シンジ君は悪役令嬢だった……?



まあ、それはさておき。これは本当に人気でした。

エヴァに取り入れた人は、本当に罪づくりの天才です。

ナデシコとか、タイムリープとか、ネタ元はありましたけど。

勿論、あっという間に真似され、流行りました。



あ、大前提で言っておきますが、この手のパクリは

「人気ほしいから安易にパクる」という感じでは『ほぼない』です。



作者自身が、そのジャンルに「クリティカルヒット」したので

「俺もそれ書きたい!」で乗っかる、というのが大半です。

シンプルに考えたら当たり前ですね。

人気アイディアは、読者に受けるから流行る以上に、

作者にもヒットしてるのです。好きだから書く。シンプル。


流行るのは「作者がそもそも好きだから流行る」のです。

是非覚えてください。

これは、現代のテンプレ流行にも強くいえます。


大半の読者が読みたいものは、大半の作者も読みたいのです。

それが高じて、自分から書いちゃえ、そうなるだけです。

単純に大衆受けではなく、自分ウケを狙ってそうなるということです。

小説においては、読者と作者は【非常に距離が近く】。

また小説にスキルやツールはほぼいらないので……。



書きたい!と思ったら読者は即座に作者に変わる事を覚えておいてください。

読者が読みたいものは、すぐに、書かれるもの、に変異するのです。

今日の読者は明日の作者です。

こんなに読み手が即作り手になる創作物は他にありません。


読者にウケるということは、それを書きたいという作者の量産を必ず意味します。

何故なら、読者とは明日の作者だからです。

あるいは、作者は普段は読者だからです。


『読者にウケたら作者にも流行る』

これは非常に大事なので、片隅に覚えておいてね。




エヴァに話を戻します。

ちなみに戻る際に、身体能力も上がったり、料理もプロ級、チェロもプロ級になってたり

使徒と会話できたりとか、強化されすぎな能力も付与されることもよくありました。


これらを『逆行ボーナス』と呼んだりもします。

お前、ラストでもそんな強くねーだろ。逆行ボーナス受けすぎだろみたいな。

おっと。今で言う『神様ボーナス転生』の片鱗が見えていますね。

そう、この頃から、既に二次と一次の歴史は繋がり始めています。


まあ、原作それぐらいしないとスカッとする話にならないし。的な。



そして、逆行がここまで好き放題やるなら、じゃあ逆行じゃなくて。

そもそも最初から、スーパーでいいじゃない。というものが生まれます。

未来知識はないけど、同じようにスーパーな能力持ってたりってことです。

逆行の上にスーパーになることもあります


まあ、これも確かに通じますね

逆行でバンバンやるなら、最初からでもいいじゃん。なるほど。


似たような作品がたくさん流行る事により。

一々冒頭で同じ展開するなと。結果が同じなら一緒でいいよと。

そういう風に、作者や読者が思ったわけですね。

なるほど、理論は通っています。



ちなみに、後々の神様転生などでも同じものはみられます。

昔は神様のやり取りで3話ぐらい使うのも珍しくなかったですが、最近は1話どころか、3行で終わったりしますからね。わかりきった冒頭は端折れということです。



ま、そういうわけで、スタートからスーパーな作品がでるようになりました。



さらに、ここにギャグ作品やシュール作品も混ざってくることにより、

どんどんエヴァ二次はカオスの様相を出していきます。

シンジくんは、古武術の達人だったり、剣豪だったり、錬金術師だったり。

剣術の極意をもって使徒を倒すなんてまだ可愛いほうで、

なんか魔法が使えたり、超能力が使えたり、東方不敗マスターアジアだったり。

もうなんか色々です。

もはや使徒より使徒っぽかったりもしますし、なんならエヴァに乗らずに倒します。カオス。


まさしくスーパーでハイパー。スパシンの名前に恥じぬ大活躍です。

  ※作ってた作者は今頃恥ずかしがってるかもしれないが



しかし、ここまできて、はたと読者は気づくわけです。




「これもうシンジじゃなくね?」




そこに気がつくとは……

天才じゃったか。



……そう。


「キャラ改変」の流れが徐々に徐々に広まっていった結果。

最強のザクを作ろうと、ザクを改造して、

ビームつけて、ファンネルつけて、対艦刀つけて、

あれもつけて、これもつけて、ってやってたら

いつの間にか、頭しか残ってなかった。むしろ頭も消えた。

もう名前しか残ってないやん!

これザクと言う名の完全別機体じゃん!別の意味でスーパーフリーダムじゃん!

そんな感じで。


キャラ改変、は、いつの間にか。



『魔改造』にまで達していました。



原型はどこにもありません。残ってるのは名前だけ。

昔なら許されなかったでしょう。しかし、徐々に徐々に、少しずつ改変が進み、増量され、変化していた結果、いつの間にかこういう文化もできていました。

勿論苦言を呈する人もいましたが、流れは止められません。

流れを分解していくと、何か不自然なことが起きたわけではないのです。

細かい変化の連続が、いつの間にか大変化になっていたのです。



でもまあ、とにもかくにも。

そのように『魔改造』しても『あり』になった結果、どうなったか?



さっき、魅力的なヒロインがいる二次創作は流行る。

と言いましたね?Kanonやエヴァなどは、それを強く満たしていました。


原作キャラとは言えないような設定でも、展開でも許される。

そんな空気が蔓延した時、作者の妄想の行き着く先は1つ。

二次創作は、新たな展開を見せます。



「自分の(願望載せた)キャラでこのヒロインとくっつきたい!」

あるいは

「自分がこのヒロインとくっつきたい!」です



男の妄想としては、実に健全だと思います(擁護)。

女も男も、アイドルに貢いで、恋人になる妄想する人は

いつの時代も尽きないし多少はね?




そして、魔改造は半端ない大加速を見せます。

これがメアリー・スー(自己投影された二次キャラ)のお手本です

といわんばかりの設定を、主人公に山盛り特盛りしていきます。

もはや、作者の願望全部のせの、主人公と言う名の何かです。




ちなみにこれは、エヴァ以外でも非常に、非常によく見られました。

大体流れは同じです。

最初はちょっとした改変。それが、ちょっとずつ盛られていったのです。

さながら、どこかで誕生した普通のラーメンが、段々大盛りサービスをしていき、

それが少しずつ過剰になった結果、いつの間にかラーメン二郎になってたように。

そして、二郎は二郎であって、ラーメンとは別、とか言われちゃうように。

いつから魔改造という明確な区切りはないです。「徐々に」です。


さて、そんな犠牲者の一例を出しましょう。

 ※ちなみに別物という揶揄から大抵ローマ字で呼ばれます


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・Kanonの祐一くんが魔改造された『U-1』。

 多分この手の一番の開拓者であり被害者

 元傭兵、元暗殺者、元天使……天使!?

 魔法使ったり聖剣使ったりするやつもいました。聖剣ってなに?

 ランクはBランクに見せたSSS。ランクって何?

 U-1は祐一のもじりであるとともに、Ultimet-1(究極の1)という

 全部のせの果てに到達した神的な何かが広まった物。

 改めていいますが、Kanon原作は単なる学園日常ものです

 

・機動戦艦ナデシコのアキトこと『AKITO』

 彼も「逆行もの」に非常に相性のいい設定を持ってたため

 半端なく改ざんされました。ヒロインは大抵ルリ


・GS美神の横島こと『YOKOSHIMA』

 文殊という便利すぎる能力と、妖怪に好かれるというハーレム体質が

 作者にクリティカルヒット!妖怪なら法律関係ないしな!

 人間辞めるのなんて当たり前、神になるわ魔王になるわ

 その上、エロもギャグも一切なしの横島もザラ。こいつ誰?


・その他……Fateの『SHIROU』とらいあんぐるハート3の『KYOUYA』

      当然ながらエヴァの『スパシン』。なのはの『YUーNO』

      そして現代でも、『俺ガイル』の『HACHIMAN』など。

      もっとも今では『オリ主』に押されてますけど

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こんな感じです。


大まかに、主人公は、銀髪碧眼オッドアイで、

顔見ただけで失神するほどのイケメンで

元天使で悪魔で二刀流でなんかビームうって悲しい過去があって

なんかの生まれ変わりで……。

(Kanonの祐一君の話です)



こんな風に、主人公は作者の願望を全て乗っけて……

あるいはそれに同調した読者の願望を全て乗っけて……。

「原作キャラ」ではなく。



「読み手(あるいは書き手)」の分身、としての属性を強くしていきます。



まあ、もともと小説が、そういう「感情移入して読む」

タイプの物語に非常に強く、得意な媒体というのもあります。

主観視点で楽しむ話に向いてるし、自然とそうなるんですよね。


逆に誰にも感情移入せずに、俯瞰視点で楽しむ話には、

高いスキルがいりますし、そんなに向いてません。

それやるなら、漫画や映画やアニメ等、映像作品のほうが向いてます。



そう、小説ってのは、感情移入する話を元々求めてる人が、きやすいって事です



なので、これ(読者の分身キャラ無双)は正直人気出ました。

今の貴方がどう思おうと、人気は出ました。

出てほしくなかった?知るか!出ました!


自分の(凄い)分身が活躍して、可愛い女の子にちやほやされる話、読みたいよね。

筆者は読みたい。誰だって読みたい。

年に何億も稼ぐ社長も同じこと思ってるので、キャバクラにいきます。

年に何億も稼ぐ人がやることを、無料で体験できる……

二次創作は神がもたらした奇跡かな?


というわけで。




さて、ここまでの軽いまとめとして。

二次創作が、段々


「原作キャラが、

 原作キャラ同士で幸せになるのを楽しむ話」から

  ↓

「改変された原作キャラが、

 原作キャラと幸せになるのを楽しむ話」になり

  ↓

「自分の分身たる(超改変された)原作キャラが、

 原作キャラと幸せになるのを楽しむ話」


に変化していった流れを説明しました。




これが『ハーレム革命』に端を発する

『魔改造主人公』というブームの成り立ちです。




そして、このブームは、二次創作界隈……

のちの一次創作界隈にもつながる事件を、いくつかもたらしました。




1つずつ解説しましょう。




1つ目はですね。


まず、ここまでくると、真っ先に皆が思うことがあります。




「これもう、原作キャラじゃなくてもよくね?」




ついに気づいてしまったか……。


これが『オリジナル主人公』が出るきっかけです。


つまり、ついに形だけでも『原作キャラ』でやっていた世界に

『完全オリジナルキャラ』が入る空気の流れがきたのです。

(まあ、既に99%オリキャラでしたが)



しかし、どうやって?



流石に、急に主人公をどかしてオリキャラ登場して……では、

いくらなんでも、叩かれそうです。

シンジ君なんて基本代わりいないし。



しかし、それを解決する作品とアイディアがでてきたんですね。




それこそが、今の『転生もの』の前身である

革命的アイディア……




『憑依もの』です。






これが、創作界隈に、震度7ぐらいの大激震を起こしたのです。



続く!





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