第3話  憑依とかイッちゃってるよ。あいつ(設定的にも)未来に生きてんな

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 憑依とかイッちゃってるよ。あいつ(設定的にも)未来に生きてんな

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



幸福な結末や、誠実を求めたらハーレムが発生し。

「ハーレム許容の文化」が、徐々に変異し

  ↓

「魔改造主人公を許容する文化」になり

  ↓

「原作キャラではなく、自分の分身が

 活躍するのを楽しむ文化」になった


 というのはお話しました。

 ※原作キャラ同士を楽しむ文化が消えたわけではない



しかし、それでも、辛うじて二次創作の体面……


  オリジナルキャラを主役と交代させない。


という体裁は(ギリギリだけど)保っていたのです

祐一君も、過去の思い出をヒロインと共有してるしね。

シンジ君も、色々血のしがらみが多いし、

とっかえることはできないのです。



ほぼオリキャラやん!と皆思いつつも、

それでも最後の一線はありました。

やっぱり、それでもオリキャラ主人公は許せない空気が漂ってたのです。



あの伝説的ギャルゲー、ときメモの二次なんか、大体において主人公の名前が

『ぬしびと こう』、コウ君でしたからね。


分かります?勿論「主人公」からとってるわけです。

今でもたまにみますよ。ぬしびとこう君。

公式ネームのない苦肉の策というわけです。

この手の、名無しネームにはホント古今東西、二次作家は悩んでいます。特にゲームね。

その中でもドラクエやメガテン系とか特になくて困る。

パワプロとかもそうかな。小波(コナミ)君とかね。よく見ます。


今だったら余裕でオリジナルネームのオリ主にしますよね。

不自然すぎでしょ、「主人 公」みたいな名前。


でも、そんなことは当時の作家もみんな分かってました。

それでも、オリ主でやるということを受け入れる空気はほぼなかったのです。

「魔改造主人公」はアリでもです。


それぐらい「原作を大事に」という言葉の体裁は強かったです。

意外かもしれませんが、魔改造主人公を作ってる人でも、

原作の体裁は、可能な限り守りたい、という人が多かったんですよ。



でも、やっぱ不便……。

なんか、書きにくい。なんか、冷める。

なんとかならんものか……!



しかし、あるアイディアにより、そのラインは超えられます。

創作界隈を一気に発展させた、神の如きアイディア……

そのアイディアの名は……



   『憑依』と言います。




この破壊力は……ヤバかった。マジで。


天才的……天才的なアイディアといっていいでしょう!





これは、実は二次創作発祥ではありません。

オリジナル……一次創作界隈のアイディアです。

正確にはそれ以前も多少はあったんですが、

超広まったのはここらへんです


憑依を扱った作品の一例を出します。

『腕白関白』。2008年の一次創作作品です。


なろう以前の大手投稿サイトだった『Arcadia』における

当時の大人気作品です。


ざっと話しますと

「現代知識をもった日本人が、

 いつの間にか、歴史では切腹させられて死んだ豊臣秀次に乗り移ってた。

 このままだと死んじゃうから、未来知識で活躍すっぜ!」


という内容です。

今の悪役令嬢ものなど、悪役転生系に通じるものがありますね。

つまり、秀次さんに現代人が『憑依』したわけですね。


秀次さんは、秀次さんでありながら、秀次さんではありません。

秀次さんという器に入った、現代一般人です。

現代的知識と価値観をもつ『読者の分身』なのです。



作品が面白いのもありましたが、

それ以上にこのアイディアのもたらした衝撃と秀逸さといったら!



勿論、憑依という考え方自体はそれ以前にもありましたよ。

でも、メインに組み込み、広めたのはこれがきっかけだったと思います。

あの頃にこれが書籍化されてたら、世に半端ない衝撃を与えたでしょうねえ。

JINや信長のシェフに並んだかもしれません。



そしてこれは、二次創作界隈にも当然衝撃を与えました。



そう、覚えてますでしょうか。

『魔改造主人公』の欠点?として、ほぼオリキャラになってるのに

キャラのもつ固有の能力や思い出などで、設定として成り代わるわけにいかない、

というのがありました。



しかし、憑依ならば?

そのキャラをどかさず、それでいて、自分の分身的なキャラを

容易に介入させることが出来るのです!



分かります?二次創作界隈が喉から手がでるほど欲しかった

自分よみての分身』をこんなにスムーズに挿入できるアイディアがここに!



しかも、この憑依というアイディアは、

二次では、元々近いネタがありました。


何かわかりますか?



それは……『逆行』です。


エヴァで説明しましたね。


逆行というのは、

「未来のキャラが、過去のキャラに『憑依』する現象」ともとれます。

さっきの腕白関白さんも、こういうふうに表現すると

「逆行もの」の発展系であるとも言えるでしょう。


一次創作と二次創作が絡みあってるというのは、こういうとこからもいえます。

お互いを知らずして片方は語れないのです。


ただし、逆行は、あくまで当人が戻るという事に対して、

憑依は、全く無関係の人が乗り移ることが可能です。


つまり、憑依は逆行の派生であるといえるし、

上位互換のアイディアとも言えます。



まあ、そういうわけで、既にこのアイディアを受け入れる土壌があり

かつ、魔改造主人公になり変わる設定を求めていた

二次創作界隈は、ここに飛びつきました。

もう、超飛びつきまくりました。一大ジャンルを作りました。


そして、このアイディアは今も残っています。

『オーバーロード』などゲームキャラに気づいたらなっていた、は

『転移』ですが、『憑依』ともいえますね。

『悪役令嬢もの』なんかも同様です。

憑依する対象が、歴史上の人物から、架空のものに移っただけ。


なんと素晴らしい歴史の発見だったのか……!

本当に天才の閃きだと思います。

何百万人に影響を与えたターニングポイントといっても過言ではないでしょう。

この年代以前に憑依はほとんど見受けられなかったと思います。



なんていうかですね。今更ですが。

魔改造主人公は、やっぱり、中途半端なわけです。


原作キャラというほど原作キャラでもなく(当然だけど)

読者の分身というほど、原作から切り離されてるわけでもない



   『不満』がありました。

   『不便』でもありました。



なんかもやもやする。どっちでもない存在。

なんとか、この壁を突破できないものか……。


ここに表れたのが『憑依』でした。



ただ、この『憑依』が発見・拡散された時期は、2008年以後です。

流石に、2000年以前の作品である、

Kanonに代表される葉鍵系やエヴァの二次などは陰りをみせていました。

このアイディアを大いに活用したのは、それらの作品ではありません。



そう、このアイディアを大いに活用したのは、

二次創作ブーム……

Kanon、エヴァに続く、第三の矢。

二次創作世界の、超大型巨人……


ある意味で、もっとも今の、異世界ブームの

最大の功労者とも言える作品



その名も

   



  『ゼロの使い魔』です (2004年連載開始)





さあ来ました。



Kanonに続く二次創作界の巨塔。

ありとあらゆるアイディアを生み出した魔性の作品。

ネット小説語るなら、やはりコレも抜かせません。



これが、はっきりいって。

今の『異世界転移』『異世界転生』『憑依』

『能力付与』『神様転生』……etc


全てのブームの基礎となったといっても過言ではないのです。

この作品を知らずして、異世界転移・転生を語ろうなんて、ありえないぜ!



続く!





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 『異世界』とかいう作者の願望アヘアヘ叶え装置

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



続き!


 二次創作界隈に現れた巨人、ゼロの使い魔とは!



ここで、ちょっと憑依からは少し離れてお話します。


憑依とは関係なく、ゼロの使い魔が作った流れもあるので。

またすぐあとで合流します。


さて、ゼロの使い魔のストーリーを簡単にいうと、


「ある日、日本人の少年サイトが、街中で召喚陣をみつけます。

 そしてそれに触れると、なんと異世界へ召喚されてしまいます。

 ツンデレヒロイン、ルイズの「使い魔」として。

 そして彼は、剣と魔法の世界で、召喚時に付与された能力

 あらゆる武器を使いこなす「ガンダールヴ」の力を使い、ルイズと共に世界を歩んでいく……」


こんな感じです。


おっと、今も通用しそうな設定が割りとありますね。

そう、ゼロの使い魔の世界観は、今のなろうと凄く近いです。

貴族がいて、平民がいて。剣があり、魔法があり。

魔法を習う学院があり、エルフもいて、使い魔や魔物もいて。

まさしく、中世的魔法ファンタジー!というところでしょうか?

冒険者ギルドがないのが惜しいぐらいですね!


そして、大事なことが1つ。主人公のサイト君ですが……。


今までの主人公と、一つ、大きい違いがあるのがわかりますか?


少し考えてみて下さい。


すごく大事なことです。





長々と引っ張ってもあれなんで、答えを言いましょう。


シンジ君やU-1君との一番の違い……。




それは……過去!です。




そう!過去のしがらみや、ヒロインとの絆が、何もないのです!

U-1君も過去は不明でしたが、やはり制限がありました。年齢とか。

ゼロ魔の場合、本当に何もいりません。大人でもおじいちゃんでも実は成り立つのです。

思い出もないし、血の繋がりもありません。


そして単なる一般人。だけど「召喚時の能力付与」があるから戦える。

むむ、神様転生めいたところもでてきましたね。


そうです。

サイトくんは、二次創作世界でも稀な「替えのきく主人公」なのです。

今で言う『異世界転移』で呼ばれた主人公なので!

しかも、能力付与もあるし、行き着く先は剣と魔法の中世風世界!


頭を悩ませた、重婚だのなんだのの、面倒くさい法律もありません!

あるかもしれないけど、そんなのは適当に「最初からこうだった」と改変してもほとんど不自然にならないのです!

なんだったら、えらくなれば、貴族制で君主制なので自分が法律です!



またKanonやエヴァのときは、日常バトルものとしてやりたくても

(Kanonをバトルものとして書きたがるのがおかしいという突っ込みはなし)

やはり原作設定が中々邪魔をしてたんですが。


このゼロの使い魔なら!『決闘』とか『戦争』とか

いう便利な社会構造のおかげで

とりあえず敵をボコせますね!


というわけで、ゼロの使い魔には「召喚」というワードを通じて

ひたすら色んな二次創作キャラが召喚されました。

Fateキャラが召喚されたり、銀英伝キャラが召喚されたり、悟空が召喚されたり。

召喚といいますが、今風に『転移』と今後は言いたいと思います。


これを二次創作クロスと言います。

元々クロスはたくさんあったんですが、その中でもこの、ゼロ魔クロス、は死ぬほど大流行しました。

何度ギーシュ(序盤のライバル)がボコされ、フーケ(序盤の敵)が倒され、

SUGEEされて、そこでエタるを見たことか。速いとギーシュでエタる(笑



ただ、この段階では、まだ原作キャラだけで構成されてる、という体裁はあります。

魔改造キャラが暴れているというところを乗り越えるものではありません。



しかし、それはそれとして、

徐々に『異世界』や『転移』という設定の便利さに、

皆が気づいていったんですね。

ついでに『異世界の学園』というものにも。


いや本当懐が広いんですよ。ゼロの使い魔。

大抵のやりたいことは飲み込んでくれる。



まず『異世界』!



バトルしようと思ったらバトルできるし。

政治もあるし、経営もあるし、錬金術とかもあるし。

料理してもいいし、学園もの、日常物でもいいし。


現代みたく面倒くさい法律もないのでハーレム作れるし。

女の子は可愛いし。たくさんいるし。

貴族だのメイドだの平民だの『そそる』設定が山盛りだし。

可愛い女の子を権力のもと、メイドにしたい。どう?

なるほど。みたいな。


今までの舞台アイディアの、上位互換な舞台。

設定作り、下調べが苦手な人でもなんとかなります。



また『転移』。どんな突飛なキャラでもぶち込める。

明らかに世界観が違うキャラでもぶち込める。

いや、だからこそ面白い!

過去の古き良きファンタジーにはない強み!



とにかく「しがらみ」や過去の「つじつま」を気にしなくていい!

一々過去がどうだったとか定義しなくていい!

最強キャラが突然出現したら、普通はおかしいわけです。

だって、それまで何してたんだよって話になるし。

超科学キャラもおかしい。文化の下地どこやねんて話になるし。

内政もです。どっから知識来たんですか?って話。

それがない。



「使命」もない!これも斬新。

「使命がない召喚」というのは、これは中々珍しかったのです。

そう、ルイズはサイトに使命を与えていません。

単なる「使い魔」。便利な召使程度の、ゆっるゆるな条件なのです。

これなら、ストーリーなんぞどうにでも作れますね。


異世界!転移!

うーんやりたい放題!


気持ちいいのぉ……!



そうです。

「異世界……異世界転移って、いいなあ!

 便利だなあ!

 現代日本や近未来日本が舞台って、なんて縛りが多いんだ!」


こういうのを、作者さんは感じたわけですね。




『異世界転移って、便利で楽しいな!』と。

 アヘ顔になるぐらい実感したわけです。



そう、憑依とはまた無関係に、異世界というものの

創作における懐の広さ、便利さに、作者達は気づいていきます。

これが、後々の一次創作における、異世界流行の下地となるんですね。


ゼロの使い魔はとんでもないものを盗んでいきました。

作者の心です。


という感じですね!

創作やるとわかります。異世界ものが流行るのは当然だと。

皆も小説書きましょう。異世界の便利さにアヘりましょう。


あまりの便利さに中毒になるほどです。

読者からしても感情移入しやすいしね!

まるで麻薬の依存症のような快感だぁ……!



ちなみにこの頃のなろうは、学園異能とか現代異能がまだ主ですよ。

ファンタジーはファンタジーで人気ですけどね。

なろうの流行は常に移り変わっています。




さて、話を戻しましょう。



……とはいえ、やはり初期はまだ、先程も行ったように。

『魔改造』の概念の範囲内の出来事でした。

あくまで、どこかのキャラと何処かのキャラのクロスだったり

SAITOくんだったりしたわけです。


そして『魔改造主人公』が、中途半端な存在として、

不満を与えていたのも、話した通りです。


だから、ここまでだと、単なる人気二次って言う程度だけだったでしょう。

本当の事件は、ここからはじまるのです。

そう、ゼロ魔二次が熟成し「魔改造キャラの壁」を突破できずに

なんか停滞してるころに、あれが降り掛かってくるわけです。



  そう『憑依』が。




『異世界』と『憑依』


ついに、出会ってはいけないものが、出会ってしまいました。



続く!





———————————————

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る