第8話  何故なろうは勝者になったのか!?テンプレは良い文明!ガチャは悪い文明!



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何故なろうは勝者になったのか!?テンプレは良い文明!ガチャは悪い文明!

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さて、前回。


「これまでの歴史を振り返りましょう」


と言いましたが、歴史の観点ではもはや終着が間近です。


軽く振り返りましょう。

2000年前後から爆発的に活性化したネット小説の創作文化は。

2012〜以降を機に、ネット小説の主役の座を、二次小説から一次小説にその座を譲りました。


そしてその時、二次の文化は、大多数が一次に吸収されました。


それらの文化は大きく分けると2つ。




 1つは、「シチュエーションのアイディア」

 ……異世界転移や神様転生に代表される、舞台・設定系の二次発祥のアイディアの数々。


 1つは、「創作参考創作文化」

 ……テンプレコピー文化という形で表れる、以前の創作そのものがお手本である状況。



と。


これらが、二次小説の最大の特徴。ひいては、そこからつながる、ネット小説最大の特徴です。



しかし、お気づきの通り。

そうです。

これらの『ネット小説の特徴』は『一番叩かれるポイント』でもあります。



つまり『弱点』でもある、といえる。



しかし、改めて問いましょう。





Q:これらは、なかったほうが良かったんでしょうか?あるいは、今からでもなくさせたほうが良いんでしょうか?




その答えは……。



そう



「明確に、NO!」ですね。



少なくとも、何も考えなしに「やめろ」といっても、何の解決にもなりません。



例えばアイディア郡です。


今更ハーレムを禁止?

じゃあ、命をかけて救ったヒロインが2人以上でたらどうするの?

絶対に1人を振るんですか?

あるいは、全ての創作で、登場するヒロインは1人だけと決めますか?

何十万文字、何百万文字と進む小説もあるのに?

そして、せっかく現代日本以外の文化を、作れるのに、わざわざ何故そんな縛りを?


それって「面白い」んですか?


それって「書きやすい」んですか?



あるいは、異世界の転移転生を禁止?

現実世界舞台って、縛り多すぎませんか?敵を考えるのも一苦労じゃないですか?

そもそも暴力が讃えられる時代でもないのに、バトルもの書きたい時大変では?

また、現地主人公で、主人公に感情移入してもらうことって、転生より簡単なんですか?

説明の導入を自然に入れるのも、転生の方がやりやすくないですか?

スライムに人間意識がやどったり。急に内政の天才が出たりって難しくないですか?

それを禁止して、どうなりますか?



それって「面白い」んですか?


それって「書きやすい」んですか?




何故わざわざ『書きやすくもない方向に行く必要がある』のですか?

書けない小説に、何の意味もないのに。



あるいは『創作参考創作』です。



下調べや、経験がないと作ってはいけない?

そうあらねばならない理由はなんですか?

殺人経験がないとミステリーはかけませんか?異世界ものはどうなりますか?

創作とは真似から入るのが普通ではないのですか?

アイディアに著作権はないのに、なぜ真似してはいけないのですか?

なぜ小説だけが、それを禁止されなければいけないのですか?



面白い作品を参考に書く。



それを禁止したところで「面白く」なるのですか?


それを禁止したところで「書きやすく」なるのですか?



下調べしたほうが、深みが出るだろう。そういうことを否定してるのではありません。

当然、下調べしたほうが面白い作品を書ける確率は上がるでしょう。

しかし、問題はそこではありません。



それを「強制」することが、本当に善なる結果を導くのか?ということを問いているのです。



特に「書きやすさ」を制限することに、何の意味があるのか。



それを問いかけたいのです。



そう、歴史をたどっても分かる通り、全ては「書きやすき」に流れています。

(あるいは=物語の作りやすさ)

「書きやすいこと」を許容している文化に、人は圧倒的に流れます。


ネット上の作家というのは、基本的に、素人です。

「書ききる」どころか「書き出すこと」そのものが大変です。



「物語が書きやすくなるアイディアのシェアと、それを許容する文化」



これがとてつもなく大事なのです。素人なので。

大事なので、何度でもいいます。





「書きやすい」ということは!小説の発展において、恐ろしく大事なのです!





なぜなら、創作の母数が段違いに跳ね上がるからね!


だからこそ、Kanonはマイナー原作ながら、エヴァに匹敵するぐらいの一大勢力を誇ったし。

数多の名作を生み出したのです。



なので


 「シチュエーションのアイディア」

 「創作参考創作文化によるテンプレコピー文化」


この2つの叩かれポイントは。



問題はない、どころか。



「ネット小説隆盛の成功の最大要因であり

 むしろ、加速すべきポイントである」

 


とすら言えるでしょう!(断言)



書きやすいから、アイディアを活かしやすい。

書きやすいから、作者がガッツリ流れ込んでくる。

書きやすいアイディアの土俵を、先人たちが作ったおかげで。


後発組は、ただその彼らの創作物……

ウケるテンプレを参考にするだけで、非常に簡単に作者になれる。


書きやすいから、ガンガンやる。


もちろんその結果『駄作』もガンガン産まれます。

それは否定しません。物凄い数の駄作、凡作が産まれるでしょう。


しかし、その圧倒的な『投稿母数』により……。



『名作』もガンガン産まれたのです。



『母数』の数は正義です。



もし、先にあげたような数々のアイディア郡と。

それを許容する文化が「なかった」とします。

そしたら、世界はどうなっていたか?



魔改造もオリ主も転移も転生も、アイディア拝借も。

タイムラグのないテンプレコピー文化も。


もしこれらが全て無かったとしたら……。



確かに「駄作の確率」は減る『かも』しれません(絶対減るとはいってない)。


でも、同時に「創作の母数」が「圧倒的に減っていた」でしょう。


そして「創作の母数」が減るということは「名作」も圧倒的に減る、ということです。



あらためていいますが……



「名作」は常に「駄作(凡作)」と共にあります。



これは普遍的事実です。絶対に切り離せません。



「名作」だけ。産まれる土壌なんて過去ありませんでした。

これからもないでしょう。


ネット小説だけに限りません。

プロのライトノベル市場ですら、一般小説市場ですらそうです。


名作は常に駄作と共に存在します。

どんな名作を産むコンテストも、最終的に1つや3つに絞るとしても。

大元が1000や万の応募があるから成り立つのです。


大元の母数そのものが、10や20の応募では、成り立ちません。


逆にいうと、大元の母数が1000も1万もあると、やはり、必ず光るものがでてきます。

  ※ちゃんと選別が機能してればですけど。正しいランキングとかで



でもこういう人もいるかもしれません。


いや、劣化コピーが1000も1万もあっても同じことだ!と。


いいえ、違います。



創作者というのは、ワガママなものです。


「個性」というのは、必ずいれたがるものなのです。

創作者は自分自身や作品を褒め称えてほしいものなのです。

少しだけでも「アレンジ」をいれていくものなのです。

そして、それが積み重なると、いつの間にか別物になるのです。

その流れは既に説明しましたね。



そして、創作者というのは成長もしていきます。

最初はコピーに近くても。徐々に自分で作る要素が大きくなり。

最後には別物を作り出すようになるのです。

処女作で必ず名作でないといけないという縛りなんてありません。

処女作はコピーもどきから始まった人が、良きオリジナルを永久に書けないなんてことはありません。



なので、劣化にはなりません。



それどころか、むしろ


「平均レベルは圧倒的に上昇している」といってもいいでしょう。


20年前に一番人気と言われた作品も、今みると「今なら大半の人が書けてる」。

そんなこともありふれています(先駆者としての功績をあえて省いて語るなら)。


また、幾多の人が心配してるような。


「永久に同じ流行が続く」こともありません。



なろうだって、10年以上前は、学園もの。現代異能ものが累計上位にきてましたよ。

その前でいえば純愛ものが多かったのも説明した通りですし、異世界転生にしたって、今ではやや下火で、単なる転生する、というだけでウケた時代なんかとっくに終わってます。

VRMMOばかりだ、と言われた時代だってあったし、料理ものが目新しい時代もありました。

ステータスものにスキルもの。日常物に復讐もの、婚約破棄にスローライフに経営もの。

あらわれては消えゆく流行りの数々。

変わってない?いや、ガンガン変わってますよね。正確には増えてるかな。



ついでにいうとこの頃から「こんなものが流行るようでは、小説は終わりだ」とか「作者も読者のレベルもおちたものだ」という人がいるのも変わってません(笑



こういう、未来を憂う、知識人()は10年前もいたし、20年前もいたし、今もいるし、10年後も20年後もいるでしょう。

そしてその人達が、歴史に詳しくないのもいつもどおりです。


それに。


「こんな下調べの浅そうな作品が流行るなんて」


というような作品が流行ったとしたら。


そういうのを多数の読者が思うということは。

もちろん、作者も思うわけで。


するとどうなるかというと、それをみて下調べを苦に思わない作者はこう思います。

あるいは、腕のある作者はこう思います。



「これでウケるなら、自分ならもっとウケるように書けるな……」と。



腕のない人も、こう思います。



「これでウケるなら、オレでもできそう……」と。




腕のない人がウケる事象をみることで、腕のある人が参入してくる

これぞまさに、リアル「隗より始めよ」現象。



腕がイマイチな人がランキングなどでちやほやされる!

→それをみて、腕のある人が「オレならもっと上手くやれるぜ」と突入してくる。

→あるいは隠れた未来の名作家が「あれでウケるなら、オレだって!」と突入してくる。

→母数が圧倒的に増え、幾多のアレンジ合戦が始まり、名作が産まれる!

→そのアレンジを元に、さらなる競争が始まり、何かしらのアイディアがヒットする!

→それをみて「あれがウケるなら……!」とまた新たな競争が始まる!



というわけですね。



こういう流れもあるわけです。

テンプレコピーが蔓延するということは、逆に言うと、実力者が真似する時も。

真似したからって別に排除されることはない、ということです。

それは、読者にとってはとてもよいことですよね?



これもテンプレコピーなどがもたらす善の文化といえるでしょう。




さらにまだあります。



テンプレというのは、言い換えると「王道」です。これはほぼ断言できます。


皆にウケる話。ということです。



特に『創作にあまり触れたことのない、初心者読み手』に非常にウケやすいです。



良いですか。いつの時代も『業界に入ったばかりの初心者』と

『酸いも甘いもすいつくした上級者』の好みは、絶対的に違います。



創作も同じです。初心者読み手、と、玄人読み手。の好むものは明確に違います。

それは『飽き』もありますが。


が、そもそも『読む能力』が違うからです。


『読むこと』に慣れてない層は『描写も刺激も分かりやすい』ものを好みます。


何故なら『読む想像力』が弱いので。さらに、創作に対する知識も少ないので。






……。




さて、ここまでの話で、いかなる感想をもったでしょうか?



  ハーレムや俺TUEEE、転移や転生による

 「シチュエーションのアイディア」……


  あるいは、素人の衝動のままに書き出された

 「創作参考創作文化によるテンプレコピー文化」……



これらの槍玉にあがりやすい文化が、実は、文化の発展に大きく寄与してたのが、伝わったでしょうか。


重ねていいますが、(神様)異世界転移・転生……あるいはゲーム世界転生などは。

ありとあらゆる妄想の束縛を解き放つ、天才的に書きやすいアイディアです。


あの何万部も売れてる書籍化作品も。あの何十万部と売れてるコミカライズした作品も。

あのアニメ化した作品も。


全て、それらの土壌があったから産まれたし。

彼ら自身が、また新しい文化の土壌となっていくのです。



……



というわけで。



Kanonの歴史から始まった、ネット小説の歴史講座もオシマイです。



「原作キャラに幸せになってほしいという文化」が

  ↓

「ハーレム許容の文化」になり

  ↓

「世界観改造や魔改造主人公を許容する文化」になり

  ↓

「原作キャラではなく、自分の分身が

 活躍するのを許容する文化」になり

  ↓

「異世界で好き勝手やったり

 オリジナル主人公が

 許容される文化」になり

  ↓

「神様転生すらも許容される

 どんなアイディアでも反映出来る文化」になり

  ↓

それらが「創作物を参考に創作をする文化」と混ざることで

  ↓

「恐ろしいほどに創作の間口を下げ」

  ↓

「圧倒的な作家と作品を生み出し、

 数多くの名作を生み出した」のです。




筆者もその一人です。



「これならオレでも書けそうだ」から、全てははじまりました。



筆者はもう、ネット小説界隈では「古参」と言われるような年齢ですが。


アングラに潜んでいて、一部のマイナーな創作家だけの領域だった、ネット小説。

それが、莫大に母数が増え、数千と書籍化され。

そして、アニメ化され、一部はそのクールの覇権作品にすらなっている状態。



それを喜ぶとともに、聞きかじりで叩く人が増えたことに、悲しさを覚えてもいました。



違うぞ。と。



その叩いてる部分は、決して欠点などではない、と。

むしろ、色んな人の集合知。歴史の知恵の結晶ですらあるんだ、と。

そこがあるから、名作は産まれてきたのだ、と。

書きやすいアイディアを単に否定しても、作者減少にしか繋がんないぞ、と。



是非声を大にしていいたかったので、書かせてもらいました。



それに、これも大事なんですけど。



「ネットの歴史は、実は保存されにくい」のもありますからね。



いつの間にか閉鎖していたHP。

いつの間にか終わっていたネットサービス。

それにより、歴史の空白が、書籍よりも圧倒的に起きやすい。


ネットでは何十年単位で昔の歴史は、実は非常にたどりづらいのです。

前もいいましたが、ネットは永久保存なんて、本当に嘘もいいとこですからね。



忘れないうちに、書き出しておきたい。という思いもあって、書かせてもらいました。



もちろん、所詮は一個人の視点。ここで書いたことが歴史の全てではないですが、それなりにはカバー出来ていると思います。後は、当時を知る他の人が、また現れればいいなーと思うのみですね。



というわけで、Kanonから始まった、ネット小説の歴史はこれで終わりです。




そういえば、最後に……。



『小説家になろう』という名前についてですが。



これは、今のような、書籍化ラッシュのはるか昔からついた名前です。

ネットから書籍化というのは、全くないような時代からの名前。


つまり、このサイト名の意味は、書籍化しようよ!狙おうよ!ではありません。

そういう、プロ的な意味ではなく……。



「そこの君!軽く妄想を、ちょっとでも書いてみようよ!

 そしたら、今日から君も『小説家』さ!

 さあ『小説家になろう』よ!」



こういうメッセージだと、思っています。



ネット小説の文化の歴史は。


「これなら、オレでも書けそうだ……!」


という知恵の積み重ねの歴史。


どんな小説家も、そこから始まります。



ここを読んだ読者の方には、いずれ作者として出会えることを。

作者の方には、さらなる自信を持った創作を。



期待していますよっ!




ご精読ありがとうございました。







…………






と、言いたいところですが。


あともう一つだけ。伝えそこねた事がありましたので、それで本当に最後にします。


題して



「『小説家になろう』が勝ち組になれた、本当の理由」です。



これも、歴史として、必ず伝えて置かなければならないことだと思うので。


小説家になろうが、トップを取れた最大の理由は何か……?




キーワードは……『批判』そして『批判者』です




そう、これを読んでいる、貴方のことですよ!


貴方が、なろう文化に関わってきました!



続く!





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