2018.8.25ノラ漢文読みのアタマの中3

前回に引き続き今回も、

スローモーション漢文訓読100%。


長文があるので、

縦長はやめます。


ホントに指がつるので。


前説は以上です。



『晋書』江統傳

時關隴屢為氐羌所擾,孟觀西討,自擒氐帥齊萬年。

統深惟四夷亂華,宜杜其萌,乃作徙戎論。


分解とパーツ化をまとめてやります。


時に、關隴、屢び、為る、氐羌、所、擾する,孟觀、西のかた、討つ、自ら、擒う、氐帥、齊萬年、統、深く、惟う、四夷、亂す、華を、宜しく、杜ぐ、其の萌を、乃ち、作す、徙戎論、


並び替えます。


時に、關隴、屢び、氐羌、擾する,所、為る、孟觀、西す、討つ、自ら、氐帥、齊萬年、擒う、統、深く、四夷、華を、亂す、惟う、宜しく、其の萌を、杜ぐ、乃ち、徙戎論、作す、


日本語化して訓読文にします。


時に關隴は屢び氐羌の擾す所と為り、孟觀は西討す。自ら氐帥の齊萬年を擒え、統は深く四夷の華を亂すを惟い、宜しく其の萌しを杜ぐべしとし、乃ち徙戎論を作す。



難しいところはなさそうですね。


「關隴屢為氐羌所擾」は

副詞の「屢」を除くと、

「A為B所C」

「AはBのCする所と為る」

という受動の構文ですね。


聞いたことがある人も

多いかもしれません。


「宜しく〜べし」という

懐かしい再読文字も登場。


はい次。



『宋書』氐胡 略陽清水氐楊氏

千萬子孫名飛龍,漸強盛,晉武假征西將軍,還居略陽。無子,養外甥令狐氏子為子,名戊搜。晉惠帝元康六年,避齊萬年之亂,率部落四千家,還保百頃,自號輔國將軍、右賢王。關中人士奔流者多依之,戊搜延納撫接,欲去者則衞護資遣之。愍帝以為驃騎將軍、左賢王。時南陽王保在上邽,又以戊搜子難敵為征南將軍。


分解とパーツ化をまとめてやります。


千萬、子孫、名づく、飛龍と、漸く、強盛たり、晉武、假す、征西將軍,還る、居る、略陽に、無し、子、養う、外甥、令狐氏の子、為す、子と、名づく、戊搜と、晉惠帝、元康六年、避く、齊萬年之亂、率いる、部落、四千家、還る、保つ、百頃、自ら、號す、輔國將軍、右賢王、關中、人士、奔り、流る、者、多く、依る、之に、戊搜、延く、納る、撫接、欲す、去る、者、則ち、衞る、護る、資す、遣る、之を、愍帝、以て、為す、驃騎將軍、左賢王、時、南陽王保、在り、上邽に、又た、以て、戊搜の子、難敵、為す、征南將軍、


並び替えます。


千萬、子孫、飛龍と、名づく、漸く、強盛たり、晉武、征西將軍,假す、還る、略陽に、居る、子、無し、外甥、令狐氏の子、養う、子と、為す、戊搜と、名づく、晉惠帝、元康六年、齊萬年之亂、避く、部落、四千家、率いる、還る、百頃、保つ、自ら、輔國將軍、右賢王、號す、關中、人士、奔り、流る、者、多く、之に、依る、戊搜、延く、納る、撫接、去る、欲す、者、則ち、衞る、護る、資す、之を、遣る、愍帝、以て、驃騎將軍、左賢王、為す、時、南陽王保、上邽に、在り、又た、戊搜の子、難敵、以て、征南將軍、為す、


日本語化して訓読文にします。


千萬の子孫は飛龍と名づく。漸く強盛たり。晉武は征西將軍を假し、還りて略陽に居らしむ。子無く、外甥の令狐氏の子を養いて子と為し、戊搜と名づく。晉惠帝の元康六年、齊萬年の亂を避け、部落四千家を率いて還りて百頃を保ち、自ら輔國將軍、右賢王と號す。關中の人士の奔り流るる者は多く之に依る。戊搜は延き納れて撫で接し、去らんと欲さば則ち衞護して資もて之を遣る。愍帝は以て驃騎將軍、左賢王と為す。時に南陽王保は上邽に在り、又た、戊搜の子の難敵を以て征南將軍と為す。


「晉武は征西將軍を假し、還りて略陽に居らしむ」の最後は

能動でも受動でもいいと思いますが、受動にしときました。


「晉武は征西將軍を假し、【晉武は戊搜に】還りて略陽に居らしむ」

「晉武は征西將軍を假し、【戊搜は】還りて略陽に居す」


後文の主語をどう解釈するかの差です。

どっちでも事象の理解は同じですよね。


「資もて之を遣る」の「資」は「資産」の意でよいと思います。

「資もて」は「資産を与えて」と考えるのがよいですね。


太っ腹!


「欲去者則衞護資遣之」の「者則」ですが、

文字通りは「去らんと欲する者あれば則ち」

ですが、

慣用的に「去らんと欲さば則ち」と「者」の

前を仮定チックに読んでおります。


どっちでも訳文には影響しないと思います。

あ、する?すみません。


ちょっと変わっているのはそれくらいでしょうか。



『三國志』周魴傳付周処傳

[一]虞預晉書曰:處入晉,為御史中丞,多所彈糾,不避彊禦。齊萬年反,以處為建威將軍,西征,眾寡不敵,處臨陳慷慨,奮不顧身,遂死於戰場,追贈平西將軍。處子玘、札,皆有才力,中興之初,並見寵任。其諸子姪悉處列位,為揚土豪右,而札凶淫放恣,為百姓所苦。泰寧中,王敦誅之,滅其族。


分解とパーツ化をまとめてやります。

不+動詞は否定形にしていますよ。


虞預、晉書、曰わく、處、入る、晉に、為る、御史中丞、多い、所、彈糾する、避けず、彊禦を、齊萬年、反す、以て、處を、為す、建威將軍、西征す、眾寡、敵せず、處、臨む、陳に、慷慨す、奮う、顧みず、身を、遂に、死す、於いて、戰場に、追贈す、平西將軍を、處の子の玘・札、皆な、有り、才力、中興の初め、並びに、見る、寵任、其の諸子姪、悉く、處る、列位に、為る、揚土、豪右、而して、札、凶淫放恣、為る、百姓、所、苦しむ、泰寧中、王敦、誅す、之を、滅す、其の族を、


並び替えます。


虞預、晉書、曰わく、處、晉に、入る、御史中丞、為る、彈糾す、所、多し、彊禦を、避けず、齊萬年、反す、處を、以て、建威將軍、為す、西征す、眾寡、敵せず、處、陳に、臨む、慷慨す、奮う、身を、顧みず、遂に、戰場に、於いて、死す、平西將軍を、追贈す、處の子の玘・札、皆な、才力、有り、中興の初め、並びに、寵任、見る、其の諸子姪、悉く、列位に、處る、揚土、豪右、為る、而して、札、凶淫放恣、百姓、苦しむ、所、為る、泰寧中、王敦、之を、誅す、其の族を、滅す、


日本語化して訓読文にします。


虞預の晉書に曰わく、「處は晉に入りて御史中丞と為り、彈糾する所多くして彊禦を避けず。齊萬年の反するに處を以て建威將軍と為して西征せしむ。眾寡は敵せず、處は陳に臨みて慷慨し、奮いて身を顧みず遂に戰場に死す。平西將軍を追贈さる。處の子の玘・札は皆な才力有り。中興の初め、並びに寵任さる。其の諸子姪は悉く列位に處し、揚土の豪右たり。而して、札は凶淫放恣、百姓の苦しむ所と為る。泰寧中、王敦は之を誅して其の族を滅す。



例外的な読みは以下のとおりです。


「建威將軍と為して西征せしむ」は「處を以て=處を」なので受動扱いですね。

「戰場に死す」は「戰場に於いて死す」でもよいのですが冗長なので省略です。

「追贈」は「死後に官位を贈られた」の意なので、受ける側は常に受動ですね。

「寵任さる=見寵任」の「見」は「被」と同じで受動を意味します。


はい次。



『晋書』孟観傳

氐帥齊萬年反於關中,眾數十萬,諸將覆敗相繼。中書令陳準、監張華,以趙、梁諸王在關中,雍容貴戚,進不貪功,退不懼罪,士卒雖眾,不為之用,周處喪敗,職此之由,上下離心,難以勝敵。以觀沈毅,有文武材用,乃啟觀討之。觀所領宿衞兵,皆趫捷勇悍,并統關中士卒,身當矢石,大戰十數,皆破之,生擒萬年,威慴氐羌。轉東羌校尉,徵拜右將軍。


分解とパーツ化をまとめてやります。


なお、孟観という人の列伝ですから、

観は人名ですのでご注意下さい。

「観る」ではありません。


氐帥の齊萬年、反す、於いて、關中に、眾、數十萬、諸將、覆敗す、相繼ぐ、中書令の陳準、監の張華、以て、趙・梁諸王、在り、關中に,雍容たる、貴戚、進む、貪らず、功を、退く、懼れず、罪を、士卒、雖も、眾し、為さず、之、用を、周處、喪敗、職とす、此の由を、上下、離す、心を、難い、以て、勝つ、敵に、以て、觀、沈毅なり、有り、文武の材用、乃ち、啟す、觀、討つ、之を、觀、所、領す、宿衞の兵、皆、趫捷、勇悍、并せて、統ぶ、關中の士卒、身ずから、當る、矢石に、大いに、戰う、十數、皆な、破る、之を、生きながら、擒う、萬年、威慴す、氐羌を、轉ず、東羌校尉に、徵す、拜す、右將軍を、


並び替えます。


氐帥の齊萬年、關中に、於いて、反す、眾、數十萬、諸將、覆敗す、相繼ぐ、中書令の陳準、監の張華、趙・梁諸王、關中に,在り、雍容たる、貴戚、進む、功を、貪らず、退く、罪を、懼れず、以て、士卒、眾し、雖も、之、用を、為さず、周處、喪敗、此の由を、職とす、上下、心を、離す、以て、敵に、勝つ、難い、觀、沈毅なり、文武の材用、有り、以て、乃ち、啟す、觀、之を、討つ、觀、領す、所、宿衞の兵、皆、趫捷、勇悍、并せて、關中の士卒、統ぶ、身ずから、矢石に、當る、大いに、戰う、十數、皆な、之を、破る、生きながら、萬年、擒う、氐羌を、威慴す、東羌校尉に、轉ず、徵す、右將軍を、拜す、


日本語化して訓読文にします。


氐帥の齊萬年は關中に於いて反し、眾は數十萬ありて諸將の覆敗するもの相繼ぐ。中書令の陳準、監の張華は、趙・梁諸王の關中に在るも雍容たる貴戚にして進むに功を貪らず、退くに罪を懼れざるを以て、士卒は眾しと雖も、之が用を為さず、周處の喪敗は此の由を職として上下は心を離し、以て敵に勝ち難しとす。觀の沈毅にして文武の材用有るを以て、乃ち啟して觀に之を討たしむ。觀の領する所の宿衞の兵は皆な趫捷勇悍、并せて關中の士卒を統べ、身ずから矢石に當りて大いに戰うこと十數、皆な之を破り、生きながら萬年を擒え、氐羌を威慴す。東羌校尉に轉じ、徵されて右將軍を拜す。



上文の中では、以下の文章は長いので理解が難しいですね。


中書令陳準、監張華,:主語

以趙、梁諸王在關中,雍容貴戚,進不貪功,退不懼罪,:理由

士卒雖眾,不為之用,:現象1

周處喪敗,職此之由,:現象2

上下離心,難以勝敵。:現象3


文章の構造としては上のような感じです。


陳準と張華は、 :主語

趙王と梁王がセレブでがっつかないので、:理由

兵士は多いけどやる気なし、  :現象1

周処はそのためにお亡くなり、 :現象2

将兵は離心して敵に勝てません :現象3

とした。


訳すとこんな感じ。どこまでを理由にするかは、

解釈が分かれて正解がないところかと思います。


また、「職此之由」が非常に読みにくいです。


和漢では「職として此れに之れ由る」だと思います。

「職」には「専」と同じような意味もありますので、

この場合は、「職とす=もととす」でいいのかなあ。



乃啟觀討之。

「乃ち啟して觀に之を討たしむ」


これもちょっと特殊ですね。

啟=啓は「申し上げる」の意味があります。

一筆啓上の「啓」ですね。


この場合、「啟=(孝恵帝に)申し上げて」

ということになるため、その後の「觀討之」は

「觀をして之を討たしむ」と受け身の文章に

しなくてはならないのですね。



轉東羌校尉,徵拜右將軍。

「東羌校尉に轉じ、徵されて右將軍を拜す」


前回も出た「徴=召す」ですが、この場合、

「洛陽に呼ばれて」と解されます。地方から

首都に栄転したわけです。


この場合、

 孟觀は東羌校尉に転任し、

 洛陽に呼び戻されて

 右将軍を拝命した。

という意味ですので、「徴」だけ受け身です。


やはり「徴」は要注意の文字ですね。



訓読も文字化すると時間がかかりますね。


以上は齊萬年の関連記事でした。

次回は内容を見てみたいと思います。


今日はこれまでとします。

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読史の断片録 河東竹緒 @takeo_kawahigashi

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