まず「通俗續三國志」でweb検索していただきたい。
本作がトップでヒットする。
三國志系で上位ヒットって、フツーにすごくない?
すごいんだよ。見てってよ。
プロジェクト、と呼んで、最早差し支えないと思う。
ただし、有志による無償の仕事である。信じがたい。
凄まじいエネルギーを必要とする仕事であることは
誰の目にも明らかだろう。本当にお疲れさまです!
本作は『通俗續三國志』の続編に当たるものであり、
大混戦(否、泥仕合感ハンパなし)の八王の乱から、
匈奴など異民族が中華の大地で暴れまくる永嘉の乱、
司馬氏による西晋が滅亡するまでを追い掛けている。
内容に関する解説や本作の見どころについては、
まめ氏のレビューをぜひ参照していただきたい。
私も一応は東洋史屋だが、この時代はド素人で、
応援コメントの物凄さにも圧倒されるばかりだ。
河東竹緒氏は、機械的に翻訳をおこなうのではなく、
正史や地理書などを駆使して地名や役職に注を付け、
特に地勢的な考証についてはAA地図を作成・挿入し、
読者の理解の手助けとなるべく心を砕かれている。
そして、読者としての楽しみは、実はほかにもある。
河東氏の近況ノートに書かれた進捗状況と苦労話だ。
同じ東洋史屋として「わかりますー!」という感じ。
そうでない読者諸兄には未知感があって楽しいはず。
えーっと。
ちゃんと中身のあるレビューを書きたかったのですが、
何かマヌケなことにしかなってないですね。御容赦。
「徳の高い仲間たちによる快進撃の勝ち戦」ではない
というあたりが楽しいです。癖ありな所が人間くさい。
応援しています。
三国志演義やそれを元にした小説、他のメディアを読んで「三国志」に嵌まった人が必ずぶつかる壁がある。
当然、その後は正史である三国志の翻訳にいくだろう。ネットの記事では満足できず、ちくま文庫の翻訳や本屋にある関連本、図書館まで行くかもしれない。
しかし、数年もすれば気付く。「三国志の続きって、なんか、よく分からなくない?」。ネットや本屋で見ても、詳しい説明はないのである。
三国志に詳しいサイトもより三国志の内容を詳しく解説するものが多く、その前後の時代の説明には冷淡である。
「八王の乱」はどういうものであったのか。
「永嘉の変」って匈奴がモンゴルの方から攻めてきたの?
「西晋の滅亡」ってあっさり滅ぼされたようだけど、匈奴はなぜ、赤壁の戦いみたいに南に攻めなかったの?
実際、私も学生時代よく分からなかった。この謎が判明したのは図書館で「通俗二十一史」シリーズの一部である『通俗續三國志』と『通俗續後三國志』を読んでからである。ただし、本書は漢文書き下し文で書かれていたため、漢文がさほど得意ではなかった自分には難解であった。
今回、河東さんが『通俗續三國志』の翻訳に続いて、『通俗續後三國志』の現代語翻訳をされる。前編とあるが、これは西晋の滅亡までを扱うもので、三国志好きの知りたかった部分のほとんどが含まれる。後編は、ほとんど五胡十六国時代に入るもので、知識としては別の範疇である。
もちろん、史実とは異なるところも多いが、いきなり資治通鑑や晋書の原文や翻訳に向かうより遥かに取っつきやすく、理解が深まるであろう。
さらに劉淵率いる匈奴がモンゴルなどの中国北部の草原から攻めてきたと説明する人も多いが、実は内地から起こっているのでこの小説の方がそれよりも史実に近いことも一言付け加えておこう。
もちろん、飛ばし読みの十分にありである。だが、これを読み終えた後は、歴史書なり解説書を読んでも理解がしやすくなっているはずである。
しかし、小説は面白いに越したことはない。これを読んで、お読みになった方々が、楽しんでいただければ幸いである。