第6話 新生活
屋根裏部屋だよ。屋根裏部屋!
一晩だけご厄介には無かったのにどんな魔法を使ったのだろう。
魔法と言えば叔母さんと叔父さんがすんなり一人暮らしを認めてくれたこと。
思ったように生きなさいか。
少しは私の事情を知っていてくれたから背中を押してくれたのかもしれない。
そう思うのはハルさんやリーファさんに出会ってポジティブに考えることが出来るようになれたからだと思う。
それに邪魔者だと思ったら何時でも帰ってきなさいなんて泣きながら言わないはずだから。
実際の所は一人暮らしと言うより間借りみたいだけど、こっちのほうが安心できるかも。
それと一ヶ月働いてお友達というかおしゃべり相手も見つかった。
お店のテラス席の傍らで占いをしている小柄なライナちゃん。
真っ黒なチューリップハットを深く被っていて表情はよく分からないのだけどリーファさんが言うには恥ずかしがり屋らしい。
確かに顔を覗き込んだら真っ赤になっていたし、占いしている時はしっかりしているけれど。
どこかハルさんと似ている。
それにお婆ちゃんみたいな話し方をするのは占いのためかな。
因みに占い師さんらしく頭の先からブーツまで真っ黒で魔女みたいなんだけどね。
今日はリーファさんが買い物に連れて行ってくれるらしい。
買い物って言ってもカフェが入っている煉瓦造りの倉庫風の建物なんだけど。
さながら海外の市場みたいだった。
八百屋さんにお肉屋さんや魚屋さんもあるし惣菜屋さんやらチーズ専門店まである。
お酒に至っては世界中のお酒が集まったみたいだった。
どこのお店の人も優しくって驚いたのは生徒会長の大崎先輩が八百屋さんで働いていたことかな。
黒い髪を一つに纏めて笑顔で手を振ってもらえて感激だった。
外見を変えてしまった今でもあこがれの先輩だから。
リーファさんがカフェの仕入れはここで済ませているって教えてくれた。
これだけの品物が同じ場所で手に入るのなら他から仕入れる必要がないものね。
市場の先には雑貨屋さんやアクセサリーショップが立ち並びOLさん達にここが大人気な訳が頷ける。
連れられて向かった場所は工房みたいな場所で。
「ひゃう、ご、ごめんなさい」
「こら! 手伝わんか!」
いきなり飛び出してきてぶつかりそうになった赤毛でツインテールの元気100%な女の子は高校の後輩だった気がする。
「お嬢じゃないですか。今日は何用で」
「この間はご苦労さまです。今日は家具がメインかな」
「もしかしてハル坊が連れ込んだお嬢さんって」
「連れ込まれたんじゃなくて転がり込んだ。神楽 蓮です」
後輩ちゃんを追いかけてきたのはニット帽に帆布のエプロンを付けたサンタクロースみたいなオジさんだった。
一応、誤解は何とかしておかないとハルさんが可愛そうだからね。
可愛らしい奥さんが出てきて色々と相談に乗ってもらいながら必要な家具を揃えることになった。
階段の反対側にある天窓の下にはL字の机を置いて、机の反対にはベッドにローチェストやハンガーラックを。
天窓からは水上都市が望めるのだけど屋根裏部屋は大きな木の梁があって山小屋風なので家具も色もいい感じにしてくれるらしい。
オーダーメイドみたいだけど良いのかなと思っていたら大事な娘さんを預かるのだからとリーファさんに押し切られてしまう。
その後も鏡台代わりの鏡や小物を買ってもらった。
もし欲しい物があれば代金は気にしないでと言われて断ったらハルさんの人望だと思って遠慮しないでと言われてしまう。
なんでもここが出来る前からの仲間らしい。
今の時代では珍しいというか地方でもあまりこんな事はないと思う。
週明けに学校に行って帰ってくると家具なんかが全てセットされていて叔母さんが送ってくれた荷物を整理したらやっと落ち着けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます