第4話 覚悟
ダメ元で言ったことが2回とも通るとは思って見なかった。
それでも自分から踏み出したのだから止まることなんて出来ない。
コンビニに寄って履歴書を買ってバイトをすることを叔母さんに告げると驚いていたけれど私が決めたことならと喜んでくれた。
取り敢えず家を出ることは話せていないのは高校生の私には問題が大きすぎるから。
人が良さそうな店長のハル・ヒビヤさんは頼りなさそうで。
リーファ・アキバさんは頼りになる姉御肌だけどハルさんもリーファさんもハーフなのかな。
名前を聞けばそんな気もするし日本人では無いのは確かだと思う。
そんなリーファさんに言われたバイクの免許を調べたら16歳から取得ができて7種類もあるらしい。
普通にバイクの免許と言われれば普通二輪と呼ばれるもので400cc以下の免許なのだけど現状を考えれば小型二輪ですら難しい。
原付きなら1万円程度だけど普通二輪なら10万円以上の費用で。
これ以上叔母さん達に負担を掛ける訳にはいかないし、少しずつ貯めている貯金では心許ない上にバイト代が出るのは研修期間が終わる一ヶ月後だ。
それでも今は仕事を覚えるのが優先で学校が終わると直ぐにお店に行ってメニューを覚えることからスタートした。
何度もお店に来たことはあるけれどあまり食事をしたことがないので気にしなかったけれど、ここのカフェの売りはジビエ料理みたいな感じだった。
ディアーが馬刺しみたいな赤みの鹿肉。
ラパンがウサギでルーがカンガルーでボアが豚肉みたいな猪。
オーストリッチと呼ばれるダチョウの肉は鶏肉のイメージとはかけ離れた赤身肉で牛肉みたいだった。
低脂肪、低カロリー、高たんぱく、高鉄分でヘルシーらしい。
鶏肉と言えばワニのお肉が鶏肉みたいだった。
ハル店長曰く爬虫類系は鶏肉ぽいらしい。
お店で夕飯代わりに賄いまで食べさせてもらって休憩時間や帰ってから勉強もしている。
それだけで免許を取る余裕なんて皆無だった。
ちょっと焦りだしてハルさんにそれとなく言ってみると原付免許のテキストを出してくれた。
「原付免許もバイクの区分だからね。落ちる人は滅多にいないらしいけど」
「ぷ、プレッシャーが」
「引っ掛け問題さえ間違わなければ交通ルールを知っていれば受かると思うよ」
家に帰りテキストを見てみると本当に落ちる人がいるのかなと思うもので。
それに1万円札が挟まっていて『ガンバ』って小さく書いてあって涙が出そうになっちゃった。
研修期間ギリギリで原付免許もなんとか取得することが出来て。
後は合格発表を待つ気分で落ち着かない最終日にバイトに向かうために校門に向かうとスーツ姿のリーファさんが待ち構えていて叔母さんに会いに行くことになってしまった。
怪訝そうな顔をしていた叔母さんとリーファさんが二人だけで話をすることになって怒気を含んだの叔母さんの声が聞こえて気になったけれど未成年の私にはどうすることも出来ない。
家庭の事情で高校生が一人暮らししているなんて聞いたこともないし物語の中だけだと思っていたから。
結局のところ叔母さんの判断だけでは決めることが出来なくて叔父さんと相談してからと言うのが精一杯の事だったらしい。
私が叔母さん達の家に来ることですら大変だったのだから仕方がないことなのだろう。
リーファがスーツ姿で自信満々で交渉に言ったのに返答は家族会議次第だった。
「早ければ週末にでも来るでしょ。デリケートな問題なのだから余計なことはしちゃ駄目よ」
「誰が好き好んで藪蛇のような事をするか」
「へぇ~ ハルなら焼き払って蛇まで黒焦げでしょ」
戦闘狂みたいな扱いにしないで欲しい。
仲間内でも一番の平和主義者なのに。
「まぁ、良い人は幸せになれないのが本当かもね」
「人のこと言えるのかよ」
表沙汰には出来ない名刺まで持ち出して交渉に行って。
あんなモノまで買って準備万端にしているくせに落ち着きが無いと言うか。
頼れる姉御が形無しだ。
「なにか言ったかしら?」
「別に、何も」
口に出した瞬間に瞬殺されるのが分かっていて蜂の巣を突っいたりしなし。
既に覚悟は出来ているので待つだけだ。
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