第8話 告白

お日様の匂いに包まれていた。

 目を覚ますと見覚えのある階段が目に飛び込んでくる。

 悪い夢でも見てたのかな。

「夢じゃないよ」

 リーファさんの声で体を起こすとひどい頭痛と吐き気がする。

 ゆっくり飲むように言われた不思議なお茶を飲むと少しだけ楽になった。

「魔力切れを起こしちゃったんだね」

「ハルさんは?」

「女神ちゃんのフルパワーは流石に堪えたみたいでね。別の場所で静養中かな、人狼は自己治癒力が高いからね」

「夢じゃなかったんだ。浅はかな私のせいで」

 バカねって言われて鼻を指でツンとされてしまった。

「その、リーファさんも」

「うん、魔族だよ。ハルちゃんと同じ人狼。怖い?」

「ハルさんやリーファさんより。自分自身が怖いかな」

「そっか」

 止めどもない感情が溢れ出して泣き顔を見られるのが嫌で布団に潜り込んだ。

 こんな訳の分からない力があったら誰だって逃げ出すだろう。

 きっと私の両親もそうだったに違いないとおもう。

「ハルってね。小さい頃から変わった子でね。魔族なんだから魔力を持っているのは普通なのに『何で』って聞くんだよ。魔族は力が全てなのに魔力や魔術に興味を持って1人で考えて調べてた。そんなハルが居なければ私達はこの世界で生きて来られなかったと思う」

 黙ってリーファさんの話を聞くことしか出来ないでいた。


 ハルさんやリーファさんが暮らしていた国で魔族や他の種族が森の中で突然行方不明になる事件が相次いで、探索能力に秀でていた人狼の集落に依頼が来て森の中を調べていた時に濃い霧に包まれたと思ったら瓦礫の世界に放り出されていた。

 見たこともない建物の残骸ばかりか見たこともない服装をした一団と出くわして緊張が高まった時にハルさんが皆に声を掛けて落ち着かせ人の姿になり一切抵抗しないことを一度も聞いたことのない言葉で伝えたらしい。

 それは多分。自衛隊だと思う。

 でも何でハルさんは日本語を話すことが出来たのだろう。

 それはリーファさんですら知らないと教えてくれた。

 その後の森で行方不明になった魔族がこの世界に飛ばされてきた時もハルさんが対応したらしい。

「必死で言葉を覚えた頃に今度は魔物が現れるようになって大変だったんだよ。そんな時かな。魔物に襲われた人の中から強い魔力を持った人が現れて大騒ぎになった。そりゃ大騒ぎになるよね。見た目は自分達と同じなのに魔物を殺してしまう力を持っているのだから。私達が居た世界ではヒーローかもしれないけれど。この世界では異物でしかないみたいだから」

「でも、どうしてハルさんが」

「それは妾が答えよう」

 そう言いながら部屋に入ってきたのは大きな犬に跨ったライナちゃんだった。


「ある時は絶世の美女。ある時は占いオババ。しかしてその実体はプリティ ライナちゃんじゃよ」

「師匠、邪魔するのなら出ていって下さい」

「妾だって怖いんじゃよ。折角話し相手になれたのに」

「コミュ障」

「人見知りと言わんか!」

 思わず吹き出しそうになるけれど大きな犬の方に目が行ってしまい。

 手を差し出すとおどおどしながら匂いを嗅いで優しくなめてくれた。

「蓮ちゃんは魔族が怖くないの?」

「ハルさんが人狼の姿になった時は驚いたけれど怖くなかった。正義を翳す田端君の方が怖かったかも」

「ああ、あの香ばしい勇者くんか。怖いと言うより痛いよね。病んでるし」

 ちょっとエッチなアニメの台詞を叫んでいたライナちゃんも痛いと思うけれど。

 ハルさんの魔法の師匠だなんて思ってもいなかった。

 今だって視線を合わそうとすると挙動不審になるし。

 それとライナちゃんが連れてきた犬はオオカミ犬で女神のボディーガードだって言い張っていた。


「弟子はコゲコゲで休養中。それとも蓮ちゃんみたいに接客しますか?」

「無理じゃ」

 なんだかライナちゃんの扱いがぞんざいな気がするけどその筋じゃ凄く有名らしい。

 300歳の吸血鬼だなんて信じられないんだけど。

「信じられないのなら得意の死霊術でこの辺りの者を呼び出してみるかの」

「シャレにならない事を言っていると帽子を取りますよ」

「返すのじゃ! うぉぉ、視線が怖いのじゃ」

 リーファさんがライナちゃんの帽子を取り上げると顔を真っ赤にしたライナちゃんがプチパニックになってて。

 なんだかいつも以上に賑やかでハルさんがいない寂しさも少しは紛れるかも。

 あまりお客さんに聞かれては行けない単語ばかりなので話題を変えてみよう。

「あのワンちゃんって本当に狼の血が混ざっているんですか?」

「オオカミ犬じゃからな」

「シベリアンハスキーにしか見えないけどな」

「「直撃したの(しましたね)」」

 テラス席の片隅で寝ていたライナちゃんが連れきたワンちゃんが震えだしたので頭を抱きかかえると動かなくなってしまった。

「撃沈しましたね」

「そうじゃの。あのパフパフ攻撃は効くじゃろ」

「ええ、私のせいなの? 意味分かんないよ。目を覚ましてワンちゃん!」

 その後で尻尾をもふもふしようとしたらもの凄く怒られた。

「何故?」


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