第10話 異世界
「無理です」
思わず不貞腐れてしまう。
研修旅行先が異世界だなんて有り得ないでしょ。
「どうしたんじゃ。蓮。行くぞ」
「えっ。でも」
「ハルちゃんのご両親にご挨拶できるチャンスなのになぁ」
「行く……」
ライナちゃん背中を押されても動かなかった体がリーファさんにそっと耳打ちされると体が軽くなった。
それはだって女の子だし。
ハルさんは師匠のライナちゃんに杖でボコボコにされている。
顔に直ぐ出るから分かりやすい事を本人は気づいて無いんだろうなと思ってリーファさんを見ると人差し指を口に当てていた。
異世界に行くなんて何処から行くのかなと思っていたらカフェのパントリーだと思っていたドアを開けると地下に続いている階段が。
その先には頑丈そうなドアがあってハルさんが電子キーに暗証番号かなにかを打ち込んでドアを開けた。
ドアの先には3メートル四方の通路が伸びていて両側にはステンレス製の大きな冷蔵庫か冷凍庫の扉が並んでいて所々から上に伸びる階段が造られていて。
上の店舗のバックヤードに続いているのだと思う。
その先には市場で荷物を運ぶ小さな電気自動車が止められている。
確かターレーとか言う名前だったと思う。
「蓮ちゃん。こっちだよ」
「えっ、はい」
そこは通路の脇にある立方体の部屋でエレベーターホールかなと思ったけれど扉などはなく。
不思議な漆黒の部屋で片隅にポールが立っていてタッチパネルみたいな物が付いている。
そのパネルにハルさんが何かを打ち込んで掌を当てると一筋の光がパネルの中で動いたと思ったら足元に紫色の光を放つ魔法陣が現れた。
「蓮、着いたぞ」
「う、うん?」
着いたと言われても実感が全く無い。
入った時と同じ様な部屋で違う所は上に向かう階段があるくらいで。
階段を上がりドアから出るとそこは廃屋だった。
石造りの立派なお屋敷みたいだけど荒れ放題でお化け屋敷みたい。
「心配するな。ここに居るのは妾の下僕達じゃ。危害は与えん」
「で、でも居るんでしょ」
「挨拶でもするか」
丁重にお断りした。
だってライナちゃんって死霊術を使いこなすのならリッチとかなんでしょ。
「数百年前の執事とメイドじゃな」
「無理です。本当にごめんなさい」
骸骨姿の執事さんとメイドさんを想像してしまいハルさんの腕にしがみついて屋敷を出た。
「あれがルハイン王国の王都リ・ルハインじゃ」
眼の前にはあり得ない景色が広がっていた。
VRMMOの剣と魔法の世界に出てくる都市を想像していたけれど遥かに大きな2つの城壁を備えた城塞都市だった。
都市は綺麗な海に面していて大きな帆船が出入りしているのが見え。
両側は広大な森と山に挟まれて城門側は陸地の内部へと草原が広がっている。
青く澄んだ海も綺麗だけど建物は白で統一され屋根はどこもオレンジ色で堀が張り巡らされているためか陽の光で輝いて見える。
「お待ちしていました。ハルディナ様」
「待たせて悪いな」
「いえ、お迎えできるだけで光栄であります」
出迎えてくれたのはゲームでもお馴染みのライトアーマーを身に纏った竜人の騎士さんだった。そしておとぎ話に出てくる様な馬車にはカラフルで大きなハシビロコウが繋がれている。
くちばしの先が黒く黄色とオレンジのグラデーションで半眼の周りもオレンジで喉にかけて白くなっていて体は真っ黒な南国にいる鳥みたいだけど足が短いハシビロコウにしか見えない。
馬車に乗り込むとゆっくりと動き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます