──魂の根ざす場所というものが、人にはあるんだと思います──
文中にある、この示唆に富んだ一文だけでも、この大作を読む価値がある思います。最終場面、この言葉に感情が昂りました。
舞台は、月コロニーへの人類移住計画が完了し、荒地と化した地球です。
荒廃した未来の地球に生きる三人の人物に焦点をあて、物語は進んでいきます。
ナギ、トワ、サク。
地球で生きることを選んだ三人三様の生き様は、なんとも健気で、爽やかで、『生』を応援する、そんなテーマさえ感じます。
三人の壮大な冒険と旅が、周囲の者たちを巻き込み、最終的にひとつにまとまっていくまでを丁寧に描いたSF作品です。
壮大な物語の最終場面に待つ感動的なラストには、思わず号泣されることでしょう。
おすすめです。ぜひお読みください。
月へと人類は移住していくが、荒廃した地球にも残り住む人々がいる。荒れ果てた地球で一握りの希望を持つ人達。
しかし、地球に残された彼らに奇病が襲う。蔓延する奇病。もはや地球には奇病を治す技術も薬も無い。そんな中、希望を求めて月へ旅立った男がいた。妻を想うからこその愛深き、無謀ともいえる行い。男の切なる願いが月での技術者の手によって、奇病対策の薬の素が開発される。
過酷な地球環境。妻と家族を想う強い愛情。一握りの希望に賭けた行動力。旅立った父と、残された子供のすれ違う想い。それぞれの想いと現実に抗う強い意思。加速する奇病への焦燥感と食料事情。廻る運命の輪。切なく泣けるシーンも多いです。やがて、月から地球へ希望の種は送られる。希望のバトンは意外な事から絡み繋がっていく……。
荒廃した地球が映像に浮かぶほどの卓越した描写の巧さ。愛とは?絆とは?絶望の中、希望を失わない意思の強さは生き様に現れる。登場人物の心の揺れも、ひしひしと伝わってきます。
これは、地球に残された人々を救う為に行動を起こしたある男と、その男の希望のバトンパスの軌跡を追うSFを踏まえた壮大なヒューマン・ストーリー。
とても面白かったです。
すごい作品です。
掛け値なしの感動が待っています。
それぞれ独立しているような、三人の主人公がおりなす三つの物語。
その単体だけでも十分に読み応えのあるドラマとストーリー性があります。
ですが、この三つが実に意外な形で絡み合っていくのです。
この構成が見事なのはもちろんですが、この発想が素晴らしい。
絡み合っていく三つの物語には、意外な仕掛けが施してあり、その展開には驚くばかりです。
やがて立ち現れるのは、時代の波に、過酷な環境に、立ち向かい生き抜いていこうとする人間の強さ。
それが三つ物語を貫いて鮮やかに浮かび上がってくるのです。
この物語がSF世界で展開されているのが、個性的であり、同時に作品のポイントとなっているのも見逃せません。
この設定だからこそ、この物語が紡がれたのだと分かります。
荒廃した地球のイメージ、月に築かれた未来都市、そんな対比がまた鮮やかです。
この作者さんの作品はいくつか読ませていただいておりますが、今作もまた素晴らしい作品でした。
とにかく読みやすい文章、光景が広がる美しい描写、血肉の通ったキャラクター、そして予想を上回っていくストーリー展開。
まさにどれを読んでもハズレなしのすごさです。
なかでもこの作品は人の強い意志、人と人とがつながっていく大切さ、そういったものが高らかに歌い上げられています。
近未来を舞台とした世界の描写、時折出てくる花畑の鮮やかなイメージ、などなども本当に素晴らしい。
まぁいろいろ書きましたが、とにかく読みやすくて面白い作品なのです。
ぜひ読んでみてください!
異なる場所で生まれ育った三人と、彼らに関わる者たちの視点で綴られる群像劇です。
読み始めてすぐ、心を鷲掴みにされました。
丁寧に描かれた情景は心地よく、それでいて、過酷な場面での揺さぶり方は半端ではありません。本当に、「巧い」の一言。
それは構成についても同じです。
時間経過、続きの気になるところでの場面転換、名前の意味の提示のしかた、などなど……。
あくまで自然に、そして着実に、読者の脳に刻み込むような書かれ方をしています。
物語は、荒れ果てた地球と、そこからの移住が完了した月が舞台です。
過酷な環境の中で生きる人々。彼らは不安や迷いを抱えながらも、日々「自分にできること」をして生きています。
そして、どうにも抗うことのできない運命を前にしたとき、人々は何をするのか。その姿に、想いに、何度も心をうたれました。
違う価値観を持った人が出会い、また、誰かの残した痕跡に触れる。
そうして繋がった想いは、奇跡のように素敵な結末を迎えます。
是非、皆さんにもこの感動を味わっていただきたいと思いました。
本当におすすめです。
荒れ果てた未来の地球。人類が月へ移住したあとも地上に残された棄民のような人びと。
最後の月行きの宇宙船に乗った男が、地球と月と、人びとの運命をつなぐ物語。
印象的な鈴の音、感情とリンクする風景、大自然の猛威。映像や音や匂い、感情があざやかに浮かびあがる文章が、心地よく物語の世界に引きこんでくれます。
文章にひかれて読んでいるうち、つぎつぎと繋がる人の思いとエピソード。この運命はこのさきどこへ連れてってくれるんだろうとどきどきする展開。繋がったエピソードは円環になって原点にもどって、またつぎへと旅だっていく。
さわやかな読後感でした。
巧みな物語構成に感嘆させられます。読者として純粋に堪能しましたが、同時に刺激にもなりました。
読む人にも書く人にもおすすめしたい作品です。