大半の人類が月への移住を済ませ、過酷な自然環境にわずかな居住者を残すのみとなった未来の惑星、地球。
そこでは疫病を患い死にゆく者が後を絶たず――生き延びるために、ある植物を開発し、育てることが命題として課されることに。
その植物を、登場人物たちがときに罪を犯し、ときに命を懸け、すがるような想いで人から人へと繋いでゆく。
植物に乗せられた、多くの人の願い。それが、目に見える効能よりもはるかに大きなギフトをもたらします。
作り込まれた見事な世界設定は、作者をご存知の方なら納得の一言。
けれど読者の心を一番大きく揺さぶるのは、設定ではなく、そこに生きる純朴で真っすぐで一生懸命な、愛すべきキャラクターたちの生きざまです。
さまざまなキャラクターに焦点があてられ、それぞれの目線を通して物語は進んでいきます。
そのすべてが、時を超え惑星を越えて、大きな一つの環となって繋がったとき。
待っているのは、筆舌に尽くしがたい大きな感動です。
途中、何度も涙し、自分の心臓がおかしくなるかと思いました。
外出先で読まれる方は、要注意です。
文句なしに、私の大好きな作品となりました。
美しい宇宙、広大な砂漠、大地を轟かす噴火。
ナギやトワ、サクやミカたちの生き生きとした感情、表情。
大スクリーンで映画として観られたら、どんなに幸せかと思います。
その感動を、小説でも味わうことができるのです。
是非、映画のような大きな感動を、この作品を通して味わってみてください。
地球を見限り月へと移住した人々。荒廃した土地で懸命に生きる人々。
環境と運命とに翻弄されながらも、自身の役割を見つけ強く逞しく生きていく姿を描いた群像劇。
いくつもの人間の波乱万丈な人生。
それらは決して点ではなく……強い絆で紡がれている。
SFでありながら、古典的な風習も感じさせる絶妙な世界観が、未来でありながらとても良い塩梅で懐かしさを添えています。
すべての登場人物、それぞれの抱える問題が、場所を変え、時代を超え、途絶えることなく続いていく様子が、じわじわと深い希望を与えてくれました。
時にどうにも超えられない壁にぶつかり挫けそうになりながらも、かすかな光明を見出していく「人」の姿に何度も何度も感動しました。
映画で見たいと思うほど素敵なSF群像劇でした。
新天地となる月コロニーに移住した人々、そして荒廃した地球に残された人々、その二つを舞台に「人の想い」が描かれたSF物語。
もうね、泣きました。そして、微笑みました。何度も何度も泣き笑いしましたとも!
群像劇と称したように主人公が変わるのですが、彼らの想いが繋がるたびにチリッと火が付いたみたいに感動が生まれて、全身に燃え広がって熱いものに満たされていく……うまく言えないけれど、そんな感じです。
またSFというと難しそうだとか取っ付きにくいといったイメージがあるかもしれませんが、その心配は一切なし。
するりと染み込むように入ってくる軽やかな文体で、まるで映像で見ているかの如くシーンがイメージできてしまう!
砂漠の場面では熱と砂塵に乾いた殺伐とした空気を、火山近郊の場面では薄暗い中に灰落ちる重苦しい空気を、月が舞台の場面では清浄ながらどこか閉塞感のある空気をと、行ったことも経験したこともない場所なのに目から入った文字が肌に臨場感として伝わってきます。
迷っても、繋いだ手は離さない。
離れても、紡いだ想いだけは手放さない。
そんな彼らの想いの種が芽吹くその瞬間に出会える喜びを、是非皆様にも感じていただきたいです!
舞台は、月と地球です。
賓(まれびと)がなせる世界と心の神との世界がうごめきます。
人を巡り、ある病とルリヨモギギクを巡り、運命は回ります。
愛した人と離れてしまったら、人はどうなるのでしょうか。
深い洞察のもと、愛と哀しみと喜びが描かれております。
ふるさとについても考えさせられました。
きっと誰もがある郷里は、遠く想い人のいる所でしょうか。
それとも、今の愛する人がいる所でしょうか。
例え、暮らす所が荒れ果てていても、きっと心に愛があるはずです。
月と地球、あなたは、どちらに心を寄せますか。
構成力がずば抜けていると思います。
サブタイトルの文字数にも拘りを感じます。
読みやすい文体です。
感動が欲しいときに、ぜひ、ご一読ください。