温い開けっぱなしの瓶の蓋

肌に張り付くほど粘っこい、乾燥して仕舞えばどうしても不快で剥がしてしまいたくなる、炭酸が抜けて冷蔵庫のことなど忘れてしまったラムネの瓶をそっと、深く蓋をするような作品だったと思う。
甘い幻想がいつまでも新鮮であるとは限らない。時が経てば経つほどに劣化し、腐敗していくその理想郷をいつまでも開けっ放しでいられるはずがない。
夏の高い青空と、頭皮にまとわりついてくる汗と、躰を焦がす太陽。じめっぽくて一息に脱ぎ去りたくなるけども、それすらも恋しくなる夏の湿度。その一つ一つに真摯に向き合って、苦悩して苦悩して、書き上げているこの世界観だからこそ、この物語は成立すると言ってもいいと私は思う。
私の住むところではもう夏の匂いがする。だからというわけではないが、私はこの作品が腐るほど好きだ。

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