主人公が出会った美少女。主人公は少女が自殺願望を持っていると勘付きながら、声をかける。ささやかな二人の会話。しかし二人の距離は、出会ったままの距離が一番良かった。名前も知らない。教えることもない。ただ隣にいるだけの存在だった。だから、少女から自殺に誘われた時、安請け合いしてしまった。
なかなかベストな死に際はやってこない。
しかし、主人公が背中に衝撃を受けた時、読者もまた、衝撃を受けることになる。自殺しようとしていた主人公は、意外な結末を見る。
生きている限り、いつも隣合わせなそれを、我々はいつも見失いがちだ。
主人公と共にそれを実行したかった彼女は――。
是非、御一読下さい。
死のうとも思えず、生きようとも思えずにただ生死の狭間にある日常を惰性で生きている。そんな「ありふれた」青年が死のうと決心した。
死と生というものは相反して対極に位置する概念。その間をただ行き来するだけの人生とはなんと面白くない。しかしそれが普通で、ありふれているものだから、なんとも否定しきれない。
だからこそ青年は純粋すぎた彼女に惹かれたのかもしれない。
見えてしまった人の闇の部分に目を背けることもできず、ただ自分の中に巣食う恐怖と、絶望に近しい感情が混じるどす黒いものをなかったことにはできなかった。だから彼女は死をもってなかったことにしようとしたのかもしれない。
名前も告げず、ただまっすぐと死を見つめる彼女の純粋さに、私も惹かれるものを感じた。