ある青年の死

作者 大家一元

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★★★ Excellent!!!

 主人公が出会った美少女。主人公は少女が自殺願望を持っていると勘付きながら、声をかける。ささやかな二人の会話。しかし二人の距離は、出会ったままの距離が一番良かった。名前も知らない。教えることもない。ただ隣にいるだけの存在だった。だから、少女から自殺に誘われた時、安請け合いしてしまった。
 なかなかベストな死に際はやってこない。
 しかし、主人公が背中に衝撃を受けた時、読者もまた、衝撃を受けることになる。自殺しようとしていた主人公は、意外な結末を見る。

 生きている限り、いつも隣合わせなそれを、我々はいつも見失いがちだ。
 主人公と共にそれを実行したかった彼女は――。

 是非、御一読下さい。

★★★ Excellent!!!

一見すれば、ただの心中だ。
けれど、名前もお互いに分からない二人には、どこか暗い背景が垣間見える。
この話は理屈っぽい話ではなく、人の情緒にスポットを当てたものだ。
ある日出会った女の子が、何を考えてるのか手に取るように分かる。
それは、きっと自分も『同じ側』の人間だからだろう。
で、最後のオチで、出会った女の子が何故死を考えているのか。
その理由が明確でない分、想像を掻き立てられる。
死を扱ったテーマながら、登場人物の闇や周りに広がる背景を考えてしまう。
現代には、同様の悩みを抱えている人も多い事だろう。
つまり、この話は、とても時事的な作品なのだ。

★★★ Excellent!!!

死のうとも思えず、生きようとも思えずにただ生死の狭間にある日常を惰性で生きている。そんな「ありふれた」青年が死のうと決心した。

死と生というものは相反して対極に位置する概念。その間をただ行き来するだけの人生とはなんと面白くない。しかしそれが普通で、ありふれているものだから、なんとも否定しきれない。

だからこそ青年は純粋すぎた彼女に惹かれたのかもしれない。

見えてしまった人の闇の部分に目を背けることもできず、ただ自分の中に巣食う恐怖と、絶望に近しい感情が混じるどす黒いものをなかったことにはできなかった。だから彼女は死をもってなかったことにしようとしたのかもしれない。

名前も告げず、ただまっすぐと死を見つめる彼女の純粋さに、私も惹かれるものを感じた。

★★★ Excellent!!!

生きることにも、死ぬことにも本気になれなかった男と女の話。
ただ惰性で生きていた彼らが、互いの名前も知らぬうちに死ぬ。
何気ない日常の片隅で、起こっていてもおかしくないのかなと感じさせられました。
生きることにも、死ぬことにも。
意味など初めから無いのかもしれませんね。
夢を描くわけでも、希望を描くわけでもないけれど、小さな光を持った美しい話だと思いました。