『現実のひとたち』と、じゃない人たちの『そこ』

「現実のひとたち」。このワードだけで拍手喝采モノなのだけど、なんてことだろう、別にこの小説の中でこの言葉は格別に目立つというわけでは多分ない。意図的に目立つように書かれてはあるけれど、それはそうしなければいけない程度の言葉であることの裏返しでもあって、でも個人的に一番やられたワードはコレです。現実のひとたちの現実の風景、それは、とても強い。弱ってると本当にやられる。大事なのはわかるけど見るのがつらい。そういうリアリズムが感じられるのはなんていうかこう、面白いとかつまらないとかではなく、信が置ける、という感覚に近い。この小説ももう1つの本山川小説もそうだけれど、『現実のひとたち』のフィクションの裏で、じゃない人たちのリアリズムもたしかにある。わざわざ書かないとわからないけれど、わざわざ書く人は多くはない『そこ』の話。読みたかった話だなあと、そう思う。

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