バーティミアス~サマルカンドの秘宝~/ジョナサン・ストラウド

 読んだ。私は悪魔とか使い魔の出てくる話が大好き。ハリーポッターは使い魔がフクロウでちょっと清廉すぎますよね。バディものは思うようにコントロールできない相手じゃないと。そんなあなたに最適の使い魔、ごせんねん生きたジン、バーティミアスちゃんをおすすめ。


 力はちょっと、弱いけど。口先八丁手八丁で生き残ってきたジンだけあって小回りが利くよ! 硫黄の匂いと下水の匂いとそれから悪口って最高の組み合わせですよね~!



 エンタメ小説を読む時は感想だけじゃなくて筋書きの分析もしなくちゃ、と思っているのでちょっと分析的に書いてみたいと思います。苦手なんですよね、こういう、物語の骨子を抜き取る作業。でもこれも訓練だ!



 まず物語の始まり。主人公は魔術師の弟子、ナサニエル君、十一歳。彼はなにやら不満を抱えているようです。無能でナサニエルの才能に無理解な師匠、弟子のお披露目会での失態、はずかしめ。才能は有るけど世間知らずの少年が主人公。それもそのはず彼は、六歳で師匠の家にもらわれてきてからというもの、学校と師匠の家の中しか知らないのです。


 物語の始まりは、ナサニエル君が復讐を胸に誓い、中級精霊バーティミアスを呼び出すところから始まります。出会いですね。最初の印象はお互い最悪。物語の始まりとしてはわくわくしますね。危機と対立、束の間の提携!


 ナサニエルは無知ゆえに、彼に以前耐え難い辱めを与えた魔術師の家から、サマルカンドのアミュレットを取ってくるよう、バーティミアスに命じます。これが物語の契機。口火を切るわけですね。


 実はこのアミュレットがいわくつきの代物で、辛くもそれを手にしたことから彼の人生が転がり始めるのですが……。





 バーティミアスの語りを基調にして物語が描かれるので、かなりライト。同じダークファンタジーでも、ハリポタは神視点で登場人物も多く、重厚ですね。ハリポタの場合、学校、家庭、人間界、魔法界と描かれる場面も複雑。バーティミアスの世界は人間の世界と魔術師の世界が入り混じっているので単純です。町のアッパーサイド、ミドルサイド、ダウンタウン、という感じ。解説に「ハリポタの対抗馬がようやく現れた」とありますがそれは言い過ぎだと思いました。



 でも使い魔と魔法使いの関係に焦点を絞ったことで、ハリポタよりも伝えたいことがストレートに伝わってくるという利点もあります。ハリポタでは人間の扱いが小さいですが、バーティミアスは「官僚気質の魔術師」「普通の人々」という対比により一層社会風刺が効いています。

 国家の形質に批判が及びやすいのはイギリス作家のお国柄でしょうか。ハリポタでも官僚の扱いはひどかったですね。そう思うと判官びいきの日本人がハリポタを好むのも分からないでもないように思えます。物語の後半でハリーは国から追われる身となるので。



 となるとこのバーティミアスは、「出自の貧しい才気ある少年」が「知恵と工夫といけ好かないジンの力を借りて」「成り上がるまでの物語」ということになりそうです。目下のところナサニエルの課題は人間らしさの獲得でしょうか。知恵はあるけどおごりやすく、激しやすい彼は、自己コントロールの方法を教えてくれた美術教師から引き離され、悲しみのあまり事件を起こすに至ります。


 ハリーポッターの場合も、「高貴な出自を持つ」「不遇の少年」が「仲間や指導者の助けを借り」「大成して」「両親の仇を討つ」までの物語と言い表すことができるでしょうか。


 バーティミアスは気が利いて抜け目がないし可愛いし、最高の使い魔だと思います。生意気な少年魔術師とバーティミアスの冒険をぜひみさなんも応援してあげてください。最近分冊で文庫になったらしいので今が買い時だー!



 なんとかできましたかね、要約が苦手なもので、これからもエンタメ作品をばんばん要約していきたい。誰か阿瀬の好きそうなエンタメを見つけたらぜひ知らせて下さい。あんまり巻数が膨大でないものだと嬉しいです。

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