双曲線

 愛しているからこそ変わって欲しくない。その危険性を封じる一番大きな手法は殺害だろう。ただし、実行した瞬間それは失われる。処女や童貞がその瞬間に失われるように。だから主人公は、永遠にその瞬間に近づき続けたかったはずなのだ。まるで反比例の双曲線が限りなくX軸とY軸に近づき続けるように。……が、破局は不意にもたらされた。この上は、文学的に封印された瞬間の中で抱き合い続ける他ないだろう。