この物語は短い。だが、それがいい!いや、だからこそいい、と言うべきか。愛情のエッセンスのように、短い中に、現実の世界の生身の人間の愛と別れが凝縮されている。詩のように。短い中で伝えるという辛気臭くなりないメリットと、それでも尚伝わる切実な悲しさが一瞬で駆け抜ける感覚が、ヒロインの性格と丁度呼応するようになっていて、見事な構成力を感じます。
ただ、二人が愛し合った物語。その言葉で片付けるのはあまりにも簡単で。しかし、それがどれほど難しいことであるか、厳しい現実で生きる我々はよく知っている。この、混ざりっけなしの純愛の向こう側に見えるのは、死という理不尽へのむなしさ(怒り、ではない)と――死によって、遺された者に刻印される「これからを生きる強さ」なのである。
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