美貌の若者二人がイチャイチャしながら真面目に語る、イスラームのアレコレ

ある国の歴史を読み解く上で、その国の文化と思想を創り上げているものを知る必要がある。大抵の場合、それは宗教だ。イスラームの教えは日本人には馴染みが薄く、なかなか理解し難い。それを分かりやすく、ちょっと不思議な関係にある美貌の若者二人に語らせたのが、この作品だ。

スレイマン1世と言えば、軍事に長け、立法や行政の整備に努め、歯向かうものは己の息子であろうと処刑する冷酷さを持ち合わせた、オスマン帝国を最盛期に導いた皇帝だ。

だが、この作品に登場するスレイマンは、仕事中に部下に手紙を回してきたり、「恋愛小説の執筆がしたい!」と突然言い出すような天然ボケ。しかも「舞台は男子校。恋愛要素も取り入れて」だ。とんでもなく世間知らずで、人の話を聞いているかどうかも疑わしく、その思考は仕事中でも浮き雲のようにぷかぷかと浮遊して掴み所がない。

時々鋭い意見を述べるが基本ふわふわとしたスレイマンと、面倒臭いと思いながらも「一応、王族だし」と相手をする彼の書記イブラヒム。この二人の、ボケとツッコミの掛け合いにも似た会話が絶妙。現代社会に置き換えても「こう言う上下関係だったら、仕事もしやすいだろうなあ」と思ってしまうほど。歴史モノなのに、現代人チックな二人の会話は本当に微笑ましい。

会話の内容は、イスラームの法律や神についての大真面目な問答だ。キラキラと瞳を輝かせながら無邪気な質問を繰り返す子供に翻弄されながらも、根気良く答えを返す生真面目な父親の会話、と言ったところか。「コイツ、意味がわからない」と思いながらも、目の前の愛すべき青年を思わず「押し倒したい!」と葛藤するイブラヒムの心の声に、思わず苦笑。

男同士の愛情を絡ませながら、嫌な感じが全くしない。コメディという形を取っていながら、本当の二人の姿を知りたいという知的欲求心をくすぐられる。作者さまの「スレイマン&イブラヒム」カップル(?)への愛を感じる素敵な作品で、イスラームの世界を覗いてみては?

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