圧倒的な世界観と語り口に引き込まれる大人向けの冒険小説

少年時代にやり残したことを果たしに行く。

狂気をはらんだ“僕”の冒険譚は、他人事のようで、自分のことを投影しているかのようだ。
ミステリアスな物語の中に90年代エンタメへのオマージュをそこかしこにちりばめるユーモアセンス。それに共感できると、より、この狂気な物語の中に引き込まれる。

言ってみれば、これは80年代後半から90年代に青春を過ごした人たちに送る「あの頃の僕の冒険小説」なのだろう。
同世代で小説好きな人は必読。また、タグが気になった人も読んで損はない(むしろ読まないのはもったいない)。

「空気の中に変なものを」、「花火は何故打ち上がったか」の2部構成。
第2部は続きというよりも第1部のスピンオフの形になっている。
ダークでアダルトな雰囲気を持つ、現代社会の冒険譚である第1部とはテイストの違った青春小説になっていて、確かに同じ作者が書いた文章でありながら、こちらは中学生のまっすぐな青春をリアルタイムで切り取ったような印象がある。そして、これもまた冒険譚であり、ジュブナイルのようでもある。

第1部だけでも十分面白いが、第2部を読むことで、よりこの小説を立体的に楽しめるようになる。

過激な描写(性描写含む)はありますが、最後には、ともに救いがある(読者の期待とは違う救いかもしれないけれど)物語なので、読み始めたらぜひ最後まで読み進めてほしいです。
それぞれの主人公が何を手に入れたかを知ることで、この物語は文字通り完結するから。

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