うまく行かない理由は、多分空気の中に変なものを混ぜ込まれたせいで

第一話で頭がおかしいオヤジが語る内容に
「俺らが考え過ぎると困るやつらがな、空気の中に変なものを混ぜて垂れ流してんだ」
「その空気吸っちまうとな、もう何も考えられなくなんだ。生まれた理由、生きてる理由、一切合切な、全部忘れて生きるだけになっちゃうんだ」
というものがあります。
人間生きているとうまく行かないことがある。どうしたって出てくる。
それを悪魔のせいにしたり前世のせいにしたりするのが宗教で、『空気の中に変なものを』入れられたせいにするのが頭がおかしいオヤジなわけです。
でも、このなにか「誰かのせいでどうにかなっちまった」という感覚は、幼い頃から誰にでもあるものではないかなと思うのです。明確な犯人が居ないのに、誰かのせいでうまく行かない人生。好きな人にフラれたとか、夢が叶わねえとか……。
もう本当に全部『空気の中に変なものを』入れられたせいなんじゃあないかって思うときがあります。
でもそれを撒いてるやつらっていったい誰なんでしょう。
もしもそれを撒いているのが世界や社会や学校や通念なのだとしたら、『わたしたち』に好きな人と付き合うことや夢を叶えようとすることを諦めさせようとしてくるのだとしたら、それを引き裂くのはいつだって呼鈴で告白で爆音で花火で誰かを助けたいって言う一人の切なる思いなんだってことがわかりました。

私は読み終えて、このような感想を抱きました。

これは本物です。
この作品に出会えてよかった。読めてよかった。
心からそう思える作品でした。

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