文章が高密着で、読んですぐに没入感がもたらされます。
緻密な心理描写により主人公が感じていることが間近に感じられ、自分が体験しているような感覚に陥ります。
突然不思議なことが起こりますが、それがなんというか、スッと腑に落ちるんです。
超絶不思議なことが起きているというのに、とっても自然に思えて。
明日自分の身に起きても、なんら違和感がないようにさえ思わされる。でもやっぱりおかしいわけです。
その、現実と幻想のバランス感覚が素晴らしい。そしてそれが徐々に崩れていくから、己の中にあるバランス感覚まで喪失して、最後には不思議な納得感が残りました。
改めて『読書』というのは『体験』に置き換わるものなのだと思いました。