世説新語は明治書院の翻訳を昔から持っていたのですが、翻訳を読んでもなんかよく意味が分からない。登場人物たちの真意もよくわからないことも多い。この時代の特色みたいなものがわからないといけないのだなぁと思っていました。
「世説新語 on the Web」はポップな感じで時代背景や雰囲気を説明してくれるので登場人物たちの気持ちが伝わる。学術的な翻訳を読んでも自分の知識が足りなくてよく意味が分からなかった点がすっきりと理解でき、描かれている人物たちがより身近に感じられるようになりました。知識がなくてもこの時代に生きた男たち(女ももちろん!)に寄り添うことができる「世説新語 on the Web」はお勧めです。
三国志の時代から約250年後、「劉宋」の人・劉義慶が編集した「世説新語」を現代語訳したのが本作品。
三国志のスーパースター曹操を皮切りに、その息子の曹丕、蜀の軍師諸葛孔明。
その孔明を破った司馬懿を始めとする司馬一族、登場が末期なせいで世間的な認知度が低かったりする鍾会や羊祜など、三国志に登場する様々な人物のエピソードが数多く紹介されています。
曹操が袁紹と一緒に花嫁を盗もうとした話や、司馬懿と郭淮の心温まるエピソードなど、三国志本編では扱われていない話が盛りだくさん。
個人的には「鶏肋」で知られる楊脩のエピソードがやたらと充実しているのが楽しい。
ちょっとした小話集であり、一つ一つのエピソードは短くサクサク読めるので、三国志ファンにはオススメの内容です。
後半では、三国志以降の西晋や五胡十六国の人物のエピソードも紹介されており、馴染みがないので不安だという方もいるかもしれませんが、登場人物やその背景を丁寧に解説しているので、予備知識が無くてもさらりと読めます。
タイトルにデイリーとあるように毎日更新されているので、まとめて一気に読むのではなく、ちょっとずつ読み進めて日々の楽しみにするのも有りでしょう。
(あなたの知らない三国志4選/文=柿崎 憲)
『せせつしんご』と聞いて、「ああ、南朝宋の劉義慶のアレね」と分かる方は、まあだいたいアレな感じです。他に知らないといけないことはイッパイありますぞ(余計なお世話)。
冗談はさておき。
この書籍、なかなか手強いものがありまして、そもそも読む人が三国時代、西晋、東晋の推移はおろか、雑学までアタマに叩き込んでいることを前提として書かれています。
「王右軍って誰さ?」
「王羲之です」
「それならそう言えよ!」
だいたいこんな感じです。ハードル高すぎやしませんかね?
そんなわけで、読む側は註釈に頼らざるを得ないわけでして、日本人なら森三樹三郎訳(中国古典文学大系)、八木沢元訳(中国古典新書)、竹田晃訳(中国古典小説選)、目加田誠訳(新釈漢文大系)、井波律子訳(東洋文庫)がありますし、中国の方の訳注に至っては枚挙に暇がありません。ソラで言えと言われたら言えませんけどね。地味に人気があります。
さて。
本作は劉宋(五胡にフルボッコにされた司馬氏が江南に逃げて作った東晋をバックリ簒奪して建国された国)の建国を扱った『劉裕』や五胡十六国を概説する『崔浩先生の「五胡十六国」講座』で誰も知らなかった五胡&東晋の布教に勤しむ作者が超訳(も超訳で原文から激しい逸脱もあり)した点が、見所であります。
逐語訳を読むなら、目加田訳か井波訳でいいわけで、むしろそっちを推奨、三国時代に詳しい人の訳なら井波訳がバッチリです。というか、井波訳が最終到達点だと思いました。
本作の読み方はそうではなく、『劉裕』を書くために『晋書』『宋書』あたりをひっくり返してハアハアしている人から見た『世説新語』という点が面白いわけです。
まあ、そんなことは置いても、本作は一話が短文でサクッと読める上、曹操や曹丕を劉宋から見るとこうなるんだなあ、という覗き見チックな楽しさがおそらく最大のウリ、かなり意外な見え方をすると思います。曹丕の変態性とか、かなりヤバめ。
なので、三国志に興味がある方がターゲットゾーンになるかと思いますが、ネタの宝庫と言えば宝庫ですから、特に古代寄りのファンタジーを書きたい方なんぞはネタの収集にも使えますよ。
ずるずる読んでいって気がつくと、王敦や桓温あたりが気になる特典も付いてます。その落とし前は、、、たぶん五胡に詳しい誰かが付けてくれるんじゃないですかねー(棒)
どうも、三国志ファンや、中国史ファンには『世説新語』というのはあまり評判がよくないようです。が、中国文学の世界では評価が高く、私も歴史をよく知らないうちから楽しく読んだ覚えがあります。
それは、嫌いな奴のディスり方にセンスがある、といった類いの機智が見られるからです。
このあたりは、井波律子先生の『中国人の機智 世説新語の世界』にお任せしましょう。
この作品は『世説新語』をただ訳しただけではなく、そこに、またエスプリの効いたコメントをつけています。
多分、三国志ファンには「マニアックな人物ばかりだ」と思われるかもしれませんので、あえて、三国志とか知らない人に、お薦めしてみたいと思います。
普通に、かなり面白いのです。
デイリーなのに、とまらなくて、今日はずっと読んでしまいました(笑)
さくっと人物のエピソードが紹介されます。
その人のことを知らなくても、「へえ、そんな人いるんだ?」
みたいな感じで読めます。
変な話が多いです。
原文と書き下し文があります。お好みでどうぞ。
最後にツッコミやツッコミ的な人物紹介があります。
これが重要です。
世説新語は、歴史書ではなく、「ツッコミ待ちなエスプリ文学」の類いです。
ただ、素人がツッコムには難しいときもあります。
ちょっとダークでどう解釈したら笑えるのか迷ってしまうようなエピソードも結構あるのですが、作者のツッコミで、楽しく読めました。
やっぱり、世説新語は笑って読むものです。
「三国志知らないし…」という方にこそ、読んでほしいです。
まずは泣き言から入ってもよろしいでしょうか?
「東洋史やってるんなら、三國志わかるよね?」
と当然のように言われるのツラい! わからん!
でも、言い訳も逃げも許されない場面もある(泣)
そんなわけで、手を出しやすいところから入って、
少しずつ気掛けて勉強していこうと思っている。
『デイリー世説新語』、ちょうどいい感じです。
短く簡潔で注釈も付いて、且つ非常にマニアック。
カクヨムにはなぜかポスト三国時代に詳しい人々が
着実に集まって濃厚コンテンツを展開なさっている。
レビューや応援コメントも超絶濃厚で素晴らしい。
私は「おお凄い!」しか言えないけど、凄いのです。
編者の佐藤氏のツッコミにいちいち笑ってしまう。
しょーもないやつはいつの時代にもいるんだなと。
教科書で名前だけ見掛けた偉人の素顔もちらほら。
読者それぞれに色んな楽しみ方ができるでしょう。
「世説新語」という書物がある。
三国志ファンの中でもマニアを自称する人なら多くがそのタイトルを知る書物である。日本語翻訳もされているため、三国志正史の翻訳を読み終わった後に次に読む書物候補に挙げる人も多いだろう。人物エピソード集、小説集と聞けば、読みやすいと普通にそう思うこともあって。
だが、これがかなりの難物である。まず、簡素すぎるぶつ切りのため、背景が注釈を見ても、よく分からない。続けて、目当ての知っている人物がなかなか出てこない。人気のある武将系、参謀系の人物が主役の話はほとんど存在せず、正史で地味な文官と思っていた人物ばかりがでてくる。知らない人物が多く、その人物がどの時代かなかなか分からず、東晋の人物と知ってがっくりする(笑)。中国の古典を前提とした言葉遊びのエピソードが多すぎて面白くない。(教養と言われても、後世から見たら、サブカルのキャラを発言を引用して、うまく合いの手をいれるのと大してレベルは変わらない)
という理由により、翻訳があっても、史実と違うため無理矢理把握する必要もないこともあって、途中で読むのに飽きて断念する人が多いのではないか。かくいう私もそうである。
しかし、史料が少ない三国志や晋代の貴重な題材としてこれはもったいないことである。特に、小説などの書こうと思っている人には世界観が広がるための題材を捨てるのは惜しいことである。
もし、世説新語を時代ごと、人物ごとに分け、平易な文章で翻訳したものがあれば、と考えるところに、ここに実現してくれたのが本作である。
三国志ばかりでなく、今後は両晋時代のものの翻訳してくれるようだ。世説新語を読むことを断念した人もこちらから入れば、頭に入り、世説新語に再度挑戦することも可能なのではないか。
佐藤さんの本領は両晋時代なので簡単には断念はされないだろうと勝手に期待している(笑)
これから読むのが楽しみである。