古代王朝ネタの宝庫!三国志の英雄も後世から見ればかなりアレな感じ。

『せせつしんご』と聞いて、「ああ、南朝宋の劉義慶のアレね」と分かる方は、まあだいたいアレな感じです。他に知らないといけないことはイッパイありますぞ(余計なお世話)。

冗談はさておき。
この書籍、なかなか手強いものがありまして、そもそも読む人が三国時代、西晋、東晋の推移はおろか、雑学までアタマに叩き込んでいることを前提として書かれています。
「王右軍って誰さ?」
「王羲之です」
「それならそう言えよ!」
だいたいこんな感じです。ハードル高すぎやしませんかね?

そんなわけで、読む側は註釈に頼らざるを得ないわけでして、日本人なら森三樹三郎訳(中国古典文学大系)、八木沢元訳(中国古典新書)、竹田晃訳(中国古典小説選)、目加田誠訳(新釈漢文大系)、井波律子訳(東洋文庫)がありますし、中国の方の訳注に至っては枚挙に暇がありません。ソラで言えと言われたら言えませんけどね。地味に人気があります。

さて。
本作は劉宋(五胡にフルボッコにされた司馬氏が江南に逃げて作った東晋をバックリ簒奪して建国された国)の建国を扱った『劉裕』や五胡十六国を概説する『崔浩先生の「五胡十六国」講座』で誰も知らなかった五胡&東晋の布教に勤しむ作者が超訳(も超訳で原文から激しい逸脱もあり)した点が、見所であります。

逐語訳を読むなら、目加田訳か井波訳でいいわけで、むしろそっちを推奨、三国時代に詳しい人の訳なら井波訳がバッチリです。というか、井波訳が最終到達点だと思いました。
本作の読み方はそうではなく、『劉裕』を書くために『晋書』『宋書』あたりをひっくり返してハアハアしている人から見た『世説新語』という点が面白いわけです。

まあ、そんなことは置いても、本作は一話が短文でサクッと読める上、曹操や曹丕を劉宋から見るとこうなるんだなあ、という覗き見チックな楽しさがおそらく最大のウリ、かなり意外な見え方をすると思います。曹丕の変態性とか、かなりヤバめ。

なので、三国志に興味がある方がターゲットゾーンになるかと思いますが、ネタの宝庫と言えば宝庫ですから、特に古代寄りのファンタジーを書きたい方なんぞはネタの収集にも使えますよ。

ずるずる読んでいって気がつくと、王敦や桓温あたりが気になる特典も付いてます。その落とし前は、、、たぶん五胡に詳しい誰かが付けてくれるんじゃないですかねー(棒)

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