第13回 自分の《価値》は誰が決めるの?
女子プロレスファンにまたもや嫌なニュースが飛び込んできた。
女優やタレントを中心に構成されたプロレス団体・アクトレスガールズに所属する桜井まいが突然退団したのだ。だが発表された本人のコメントでは「退団」と表記されているが団体側の発表では「解雇」となっている。双方の意見の違いや捉え方がまるっきり違うのに戸惑いを感じる。
話の流れとしては桜井が突如、次の大会を最後に退団を希望したものの、彼女の退団理由やこれまでの実績を考慮した結果、団体側としては受け入れる事が出来ず、話し合いの末に本人納得の上解雇とした――との事らしい。
彼女を応援しているファンからすれば、アクトレスガールズという団体の《闇》が露見されたと言うかもしれないが、桜井まいというプロレスラーに思い入れのない者の意見としては「ちょっと違うんじゃないか?」と思ってしまう。
彼女は昨年(2020年)にデビューした、まだキャリア一年の選手であるにも関わらず個人的都合で退団を申し入れる、というのがおかしな話。多分以前のジュリアのように裏で引き抜き工作があって(スターダムか?)、この日にウチのリングに上がれますか?とその団体からの日時指定がある為に退団を急いだ、という流れだと思うがフラットな視点でみればそれほどの価値が貴女にあるのですか?と問いたくなる。
あの団体はこれから売れる(売れそうな)選手を、いろいろな団体から発掘してレスラーとしての価値を上げていくのが上手い団体。しかしフライング気味だったジュリアの獲得を除けば、どの選手も先の団体の契約満了を待ってからの入団なので団体側に個人的嫌悪感はあっても納得はいっている。今後桜井が入団するか今のところ不明であるが、プロレスのこれといった実績もない彼女を入れた所で誰が応援するのだろうか?それは以前に実務経験のある新人がデビューしたのと変わりがない。ギャランティの安さや年齢的なもの(30歳)もあったかもしれないが、自団体で儲けが少ないのであれば複数の団体にブッキングされるほどに自分の価値を高めればいい。環境が変わり彼女を観る目が増える事によって、能力や技術など足りないものが露見されて困るのは自分だから、もう少し我慢して頑張ればよかったのになぁ、と残念でならない。
桜井ばかり攻めるのも悪いから、アクトレスガールズ自体にも問題がないわけではないのでここで言っておきたい。
安納サオリや万喜なつみ(現:なつぽい)、有田ひめか(現:ひめか)など売れっ子を輩出しておきながらも、「団体の顔」(やそれに近いポジション)になると途端に皆退団してしまうアクトレスガールズ。団体を盛り上げ他所の団体でアクトレスガールズ(と自分)を大々的に宣伝しても、その団体から自分の価値に見合う程のギャランティが貰えていないのが大きな原因ではないだろうか(というか本当の所)。
そりゃあ皆さん、嫌になって辞めますわ。
男子も含めプロレスは、一部の団体を除いてビッグビジネスとはなり得ない商売。デカいギャラの貰える団体の所属になって楽に(移動面で)稼ぐか、フリーランスで複数の団体をハシゴしながら稼ぐか――幸せかどうかは本人次第だが、自分という「存在」にマネーを払うだけの価値がなければ、所属・フリー共にプロレスラーとしては生きてはいけない。だが商品価値を自分で値踏みするほどのポジションに立っていない選手は、己の価値を絶対に過信してはいけない(見栄は張るだろうけど)。
桜井まい退団のニュースを聞いて感じた違和感はこれである。
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