第12回 誰かがきっと愛してる

 2021年1月5日・新日本プロレス東京ドーム大会に、同じ親会社であるブシロードの傘下である女子プロレス団体のスターダムが、大会開始前のダークマッチにて提供試合を行った。日本で一番大きなである東京ドームで、自分の試合をお披露目できる喜びで選手たちは感慨深いものがあっただろうが、スターダムという団体を、そして女子プロレスを多くの層に認知・浸透させるにはまだ至っていないように思うのだ。彼女らの凄さを目撃・実感できたのはこの場にいた一万人弱の観客のみだろう。確かにドーム出場前に多くのテレビ番組に団体所属の人気選手が顔を出していたが、これを興味の薄い一般層が視聴してファンになったとか、試合を見てみようとは思わないはず。好意的に捉えているのはあくまでもファンだけ。


 ともかくブシロードは新日本でもそうだが、自社商品のPRに長けておりを出すのがとても上手い。大衆はその流行っている感に踊らされて(笑)、新日本が最大・最高・唯一無二の存在だと刷り込まれてしまうのだ。ただこれは以前からのブランド力もあったので成しえられたが、女子プロレスだとそうは簡単にはいかないだろう。何せスターダムはスターを片っ端からそろえた人気団体である反面、容赦ない引き抜きなどでアンチ勢も相当数いるはずなので、新日本のように「女子プロレスはスターダム一択」とは簡単にはならないだろう。一強、ではあるけれども。


 結局女子プロレスというものは、メインストリーム主流にはなり得ない存在なんだと思う。かつてのビューティペアやクラッシュギャルズのように、芸能方面へ振り切ろうにもアイドルというコンテンツ自体が今や、サブカルチャー・アンダーグラウンド化してしまっているので、女子プロレスもそれらと同様のコンテンツとして少ないパイを奪い合っているのが現状だ。


 それでもなお女子プロレスは生き続ける。


 アイドルや格闘技など様々な要素を喰らっては進化し続ける。選手個人のファンも多いが団体自体のファン――いわゆるもかなり多い。団体乱立が生んだ産物だがそれでもいいと思う。団体で培養された人気選手がフリーになっても、或いは資本力のある団体に引き抜かれようとも、選手個人が環境の変化に流されてにならない限り、誰かがあなたを愛し続けるはずだから。

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