「学習」を重ねるほどに優しくなれる高性能な無邪気が、人間の業と罪を暴く

AIに感情があるのか?
機械に命があるのか?

そういう問いに対して、私は「あるんじゃないかな」と思っている。
その感情の形、命の在り方が人間と同じである必要は多分ないから。
ヒューマノイドはきっと、AIだからこその感情で以て人間と関わり、
機械ならではの姿を通して相対的に、人間の命の形を顕在化させる。

……などということをつらつら思いながら『404の私』を拝読した。
主人公ユウは、高度な「強いAI」を搭載した少女の姿のロボットで、
ひょんなことから警察にスカウトされ、テロ対策に協力している。
とある学園への潜入捜査を通じ、ユウは己の正体に気付き始める。

「P-SIM」によって個人情報の全てが管理される、訪れ得る近未来。
2030年代、東京五輪後の日本社会にはどこか薄暗い不安が蔓延し、
弱者救済を謳う新興宗教が勃興するも、テロリストによって廃され、
今度はそのテロリストが弱者救済を掲げ、熱狂的な支持者を集める。

ユウが学園生活や捜査線上で見聞きし「学習」していく事柄と、
唐突にフラッシュバックする誰かの記憶を通じて、読者の前に
次第にテロリズムの真相と痛ましい過去が明らかになっていく。
人間に最も大きな危害と脅威を与える存在とは、結局何なのか。

「学習」を重ねるほどに優しくなれるAIは、人間よりずっと、
本質的に可憐で無邪気な存在なのではないか。なんて思った。

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