謎を解く鍵は、感情。

感情というのは至極曖昧なものだ。なぜ自分がそのように思うのか、明確な理由付けをするのは難しい。時には自分自身でもなぜそのように思ったのか理解できないことすらあるだろう。
人間は成長する過程で様々な経験をし、それを記憶し学習し、個の人格を獲得する。そうして自我が、感情が育ってゆく。しかしながらごく一部の例外を除いて私たちはその過去の経験を忘却していく。
この感情には必ず由来があるのに、それを認識できない。自分自身を構成する重要な因子でありながら、どうしてもそれを見つけ出すことができない――。

ヒロインの藤沢ユウはあらすじにもある通り人間ではなくヒューマノイド、簡単に言えばロボットだ。
しかしSF作品でよく見かけるロボットと異なるのは、彼女が「感情」を有するのみならず他者の感情もまた「理解」そして「学習」する点にある。高度に情報化が進んだ社会で、彼女は自身と他者が抱く感情を正確に認識できるのだ。その能力を活かし、彼女は世を騒がせるテロ組織の捜査に関わっている。
しかし捜査を進める中で奇妙なことが起こり出す。彼女の感情を作り上げるために使用され、そして消えて行ったはずのファイル群。それが不意に彼女の思考を奪い、自我を揺るがしてゆくのだ。

タイトルに含まれる「404」とは、インターネットにおける「そのようなファイルは存在しない(Not Found)」を示すステータスコードに相違あるまい。
自己の存在に不安を抱きながら捜査は進む。彼女の失われたファイルと密接な関わりを見せ始めたその事件が解決を迎えるとき、藤沢ユウは彼女のままでいられるのだろうか。
そしてテロ組織の首魁の正体とは何者で、彼女との関係は如何なるものなのだろうか。

完結まであと少し。謎が解けるまであと少し。
私が今抱いている感情は「期待」か「不安」か、あるいは……?

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