404の私

作者 乙島紅

97

34人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

テロ組織を追うため高校に潜入したヒューマノイド、ユウの一人称で語られるこの作品。サラリとした読み口なのに、登場人物たちの不可解な行動や主人公ユウの人格の元になった記憶など次々と謎が明らかになり、二転三転する緊迫感のあるスリリングな展開。核心に近づいて行くに従い人間らしくなっていくユウに目が離せません。そして全てが明らかになるラストの展開は熱いの一言!SF、ミステリー、ヒューマンドラマのジャンルを跨いだ名作です!

★★★ Excellent!!!

 ヒューマノイドの少女と、その周囲が繰り広げるSFミステリー。

 過去と現実が交錯していく展開、積もりに積もる数々のミステリー、そしてそれらが最後に向かうごとに、少しずつ収束していく。
 作者様の手腕も手伝って、それが一つ一つ噛み締める思いがしてきます。それで徐々に謎が解けていく瞬間が、何とも心地よい感触を思うかのようでした。

 そして重要なのはヒューマノイドの主人公。彼女の活躍、葛藤、そして想いが、このドラマをさらにエスカレートさせてくれる。最初はヒューマノイドであるという設定に奇妙さを覚えましたが、まさにこれしかないのだと実感するようになります。

 こんなミステリーに出会えて本当に良かった……そう感じる物語が、ここにあります。

 
 

★★★ Excellent!!!

AIに感情があるのか?
機械に命があるのか?

そういう問いに対して、私は「あるんじゃないかな」と思っている。
その感情の形、命の在り方が人間と同じである必要は多分ないから。
ヒューマノイドはきっと、AIだからこその感情で以て人間と関わり、
機械ならではの姿を通して相対的に、人間の命の形を顕在化させる。

……などということをつらつら思いながら『404の私』を拝読した。
主人公ユウは、高度な「強いAI」を搭載した少女の姿のロボットで、
ひょんなことから警察にスカウトされ、テロ対策に協力している。
とある学園への潜入捜査を通じ、ユウは己の正体に気付き始める。

「P-SIM」によって個人情報の全てが管理される、訪れ得る近未来。
2030年代、東京五輪後の日本社会にはどこか薄暗い不安が蔓延し、
弱者救済を謳う新興宗教が勃興するも、テロリストによって廃され、
今度はそのテロリストが弱者救済を掲げ、熱狂的な支持者を集める。

ユウが学園生活や捜査線上で見聞きし「学習」していく事柄と、
唐突にフラッシュバックする誰かの記憶を通じて、読者の前に
次第にテロリズムの真相と痛ましい過去が明らかになっていく。
人間に最も大きな危害と脅威を与える存在とは、結局何なのか。

「学習」を重ねるほどに優しくなれるAIは、人間よりずっと、
本質的に可憐で無邪気な存在なのではないか。なんて思った。

★★★ Excellent!!!

世界は近未来。
サイバー犯罪対策課vsテロ組織。

亡くなった少女の記憶。
徐々に明らかになっていく真実。
スピード感満載のクライマックス。

そんな魅力的な世界が、

"AIの一人称"

によって紡ぎ出されます。

えっ、AIってあのAIですか?
そう、あのAIです。人工知能です。

それ、物語として大丈夫なんですか?
はい、大丈夫です。それどころか、とても面白いです。

とまあ、感情を持ったAIという、書くのが難しそうなキャラクターを主人公としながらも、そのリーダビリティの高さは圧巻でした。すごい……。

SFとしてはもちろん、ミステリーとしても完成度が高いです。
ユウが追うのは、テロ組織のボス、ナポレオンと呼ばれる人物の正体。

ヒントはあるんですよ!
なのに最後まで誰がナポレオンかわからないんですよ!
だって怪しい人が何人かいるじゃないですか!

順当にいけばこの人かこの人だろうなぁ。でも裏をかいてこいつってこともあり得るのか……。
と、作者と読者のそんな駆け引きも楽しめます。

あとキャラもいいです。
三葵くんがすごく好き。心に闇抱えてる系男子ですね。
リンゴ食べてるシーンでデ○ノートの某死神さんを思い浮かべたのは秘密です。

SF好きもミステリー好きも、SFもミステリーもあんまり読んだことないけど興味あるよーって人も、何か面白いの読みたい!って人も、全員まとめてかかってこい! この小説が一人残らず虜にしてやる!
ってくらいあらゆる方面にオススメできる作品だと思います。

★★★ Excellent!!!

ヒューマイノド(つまりロボット)を主人公にした近未来ミステリー。

物語はヒューマイノドであるユウの一人称で進んでいく。一人称を、感情の無いロボットに任せて、はたして読者は感情移入できるのかと思いつつも、冒頭からテンポよく事件がはじまり、そして、突然に再生される404のファイル――それを読めば、なるほど、どうしてユウが主人公なのか納得できる展開が待っている!

「バスティーユの象」と呼ばれるテロ組織を追う中で浮かび上がる、404ファルイが再生する、とある女性の過去。それらは彼女が通っていた学校の生徒へと繋がり、そして「バスティーユの象」にも繋がっていく。宗教団体、家族、イジメ、自殺、友達、恋愛、復讐と、様々な要素がてんこ盛りの物語は結末は……

★★★ Excellent!!!

まだ読んでいる途中でのレビュー投下をお許しください。

この作者様の作り出す物語が好きで(まだ全ての作品に目を通せていないのが悔しいのですが)コンテストに作品を出す、と聞いたときもとても楽しみに待っておりました。

僕が今まで読んできたのは現代ドラマが中心でした。
その中で物語を紡いでいく登場人物たちのなんと生き生きとしていることか。
作者様のとある別作品を読み、瑞々しいとさえ感じてしまうほどの『心』の描写に、すぐにファンとなりました。

そしてついに新作のお披露目。果たして今回の物語の舞台は……。

まさかのSF!
ITミステリー!

それはもう大興奮でした。
しかし、主人公はヒューマノイド、そしてミステリーが根底にあります。
もしかしたら、今までのような心理描写はなくなり、もっと蛋白なものになってしまうのではないか……そんな風に思っていました。

が、杞憂でした。

プログラムとして与えられた擬似的な感情だったとしても、主人公である高性能ヒューマノイド『ユウ』には確かに心があるのです。
機械として発する言葉はどれも淡々としたものですが、その端々には確かに人間の心がありました。
この不思議な感覚に、一気に物語に引き込まれました。ヒューマノイドとしての彼女は、この事件の先に何を見るのか……確かめたくて確かめたくて、たまりません。

そして、物語のスピード感。
展開が早い、とかそんな簡単な話ではありません。きちんと物語が隅から隅まで丁寧に構築されているにも関わらず、目から脳へ流れるように物語が入ってくるのです。
それを強く感じることができるのは、ユウが電子データの海へとダイブし、事件の謎と謎を繋げるための『何か』を見つけていくシーン。まるでSF映像作品のように、読んでいるこちら側の視界にも多くの情報が羅列され、渦巻き、整理され、そして必要な『何か』を手に取る様がありありとイ… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

感情というのは至極曖昧なものだ。なぜ自分がそのように思うのか、明確な理由付けをするのは難しい。時には自分自身でもなぜそのように思ったのか理解できないことすらあるだろう。
人間は成長する過程で様々な経験をし、それを記憶し学習し、個の人格を獲得する。そうして自我が、感情が育ってゆく。しかしながらごく一部の例外を除いて私たちはその過去の経験を忘却していく。
この感情には必ず由来があるのに、それを認識できない。自分自身を構成する重要な因子でありながら、どうしてもそれを見つけ出すことができない――。

ヒロインの藤沢ユウはあらすじにもある通り人間ではなくヒューマノイド、簡単に言えばロボットだ。
しかしSF作品でよく見かけるロボットと異なるのは、彼女が「感情」を有するのみならず他者の感情もまた「理解」そして「学習」する点にある。高度に情報化が進んだ社会で、彼女は自身と他者が抱く感情を正確に認識できるのだ。その能力を活かし、彼女は世を騒がせるテロ組織の捜査に関わっている。
しかし捜査を進める中で奇妙なことが起こり出す。彼女の感情を作り上げるために使用され、そして消えて行ったはずのファイル群。それが不意に彼女の思考を奪い、自我を揺るがしてゆくのだ。

タイトルに含まれる「404」とは、インターネットにおける「そのようなファイルは存在しない(Not Found)」を示すステータスコードに相違あるまい。
自己の存在に不安を抱きながら捜査は進む。彼女の失われたファイルと密接な関わりを見せ始めたその事件が解決を迎えるとき、藤沢ユウは彼女のままでいられるのだろうか。
そしてテロ組織の首魁の正体とは何者で、彼女との関係は如何なるものなのだろうか。

完結まであと少し。謎が解けるまであと少し。
私が今抱いている感情は「期待」か「不安」か、あるいは……?

★★★ Excellent!!!

P-SIMというカードを使った個人情報管理。そして、AIを使った犯罪捜査。自分の友だちが実は精巧につくられたAIだったりして。そんな近い未来に実現しそうな世界の中で、やっぱり動いているのは1人1人の感情。淡い恋心や悲しみ、憎しみ。犯罪捜査にドキドキしたり、AIユウの少しとぼけた「学習」にくすっと笑ったり、かっこいいミツキにキュンとなったり、多方面で楽しめます♪それにしても、この小説の行先は・・・まだ見えない。

★★★ Excellent!!!

近未来の監視社会と汎用人型AIの社会混入がリアリティを持って独創的に描かれています。明るい未来というより不安を提起する方向性に共感を持ちました。AIが自我に目覚めた末に人類を抹消する究極の判断を下したターミネーターとは違った結末に進むでしょうが、汎用人型AIとの安定した共存社会をどのように描くのか、とても興味がそそられます。期待してます!