第15話

廊下を進むたびに、私は脚が重くなるのを感じた。

父が政治家だった所為で、権力に関わるもの全てに嫌悪感を持っているのだ。


広い屋敷、行き届いた女房への躾け、言葉。


一体藤原家には、どれだけの羨望の目が向けられているのだろうか。



「梅花、大丈夫?」


しかし私の態度の変化に気付いた業平が私の肩に手を置いて、そっと声をかけてきた。


「すいません、平気です」


私は彼の言葉に頼らずに、手を払う。





…それは周りに誰もいない、寂しげな井戸だった。


私は直ぐに水を少量すくい、匂いを嗅いだ。




これは化学の授業で習った。


微かにだが、オレンジに色がつき、酸性でアーモンドの臭いがする。



「ヒ素ですね」


「それが毒?」



論より証拠だ。


理解出来ないのなら、試してみればいい。


私はその水を側にあった花へかけてみる。

すると、数分足らずして花は枯れてしまった。



「なんでこんなものが…」



横で一連の出来事を見ていた女房が声を上げた。





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