第14話
時間にすれば20分くらいだと思う。
でも実際、体内時間はもっと長く感じた。
「さっきは本当にごめん…」
牛車から降りても、私達の周りには複雑な空気が流れていた。
紀梅花が好きだと、本当のことを語ってくれた業平。
確かに、あの真剣さには私だって惹かれたくらいだ。気持ちは分かる。
だけど。
私を見ているようで見ていない、「あの目」は気持ちの良いものでは無かった。
嵯峨天皇から蔵人頭に任命されて以来、代々地位を築いてきた有力貴族。
正門の入り口に立って、私はその館の異様さに気圧された。
しかし、業平は気後れもせずに、戸を叩いた。
どうやら仕事柄、こんなことには慣れているらしい。
少しして、中から年配の女性が現れた。
身分の低そうな服装から予測するに、女房(使用人)だろう。
「調査のために伺いました。中を見せていただいてもよろしいでしょうか」
女房は一度主人に話を付けに中に入っていっていき、しばらくしてまた戻ってきた。
どうやら、許可がおりたらしい。
私たちは、女房に案内されて門の内側へと足を踏み入れた。
「女房には数名を除いて、休みを取らせあります」
そういう彼女もまた、手に包帯を巻いていた。
包帯の隙間から見える火傷の後は、酷く痛々しい。
「井戸まで案内してください」
「井戸ですか?」
驚いた顔の女だったが、直ぐに状況を理解したのか、私たちを案内してくれた。
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