平安男装カルテット〜これは恋か、それとも友情か〜

しま

第1話

16歳、山本美紀。


住みは東京。

趣味は将棋と勉強。


父は国会議員、母は弁護士。


友人はこれといって困ったことはない。

皆、私の家の財力と血筋を見て寄ってきた。


でも本当の友達なんて、いないのかもしれない。


実際、誰かを信用なんてしたことなんてなかった。





その日は、家族水入らずの京都旅行になるはずだった。


けれど宿に着くなり、マスコミが押しかけた。

テレビのニュース速報には父の不倫がデカデカと報道されていた。


狼狽する父に代わって、母が記者につきっきりで対応をする。


私は誰の声も聞きたくなかったので、ケータイを手放して、俗世から離れた。


向かった先は覚えていない。

確か、叡山電車に乗って、どこかの山へ向かい、足の向かうまま、山道を歩いていたと思う。



気がつけば辺りはすっかり暗くなっていた。


私は無心で遠くに見える灯りに向かって進み、小さな崖に脚を滑らせ、気を失った。






______思えばそれが、全ての始まりだった。

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