ゴリラのゴリラによるゴリラのための熱きゴリラドラマ※ただし主人公は人間

異世界に転移したごく普通の少年が、勇者として魔王を倒すべく旅に出る。
こう書くと、ありがちな異世界転移ファンタジーのように思えます。
だけど、その世界がゴリラによって築かれた文明で成り立っていたら?

突然ゴリラまみれの世界に引きずり込まれて勇者を押し付けられた主人公・カズキによる、怒涛のツッコミに満ち満ちた地の文は爆笑必至。
ゴリラパワーに取り込まれるように、読者である私自身もこのゴリラワールドに導かれました。

しかし、ゴリラたちはもちろん至極真面目だし、彼らなりにちゃんとした社会や歴史、人間関係(?)がある訳です。
最初こそ個体の見分けすら付かなかった仲間ゴリラたちも、それぞれが抱える決して軽くはない事情が明かされ、カズキにとって徐々にかけがえのない本当の仲間になっていきます。

担うべき運命。
救うべき世界。

魔王とは、いったい何なのか。

そこに秘められた人間——否、ゴリラドラマは、あまりの悲劇、あまりの業に、息を呑むほどでした。
気付けば、この物語にどっぷりはまり込んでおりました。その世界に生きる人々がゴリラであることを忘れるほどに。

ゴリラを差し引いても、いや差し引いたら成り立たないんだけど、とてもしっかり作り込まれた異世界ファンタジーです。
この先も非常に楽しみです!

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