猟奇的な愛が揺れる、血みどろの繭。

 『飼育』は愛であるのか、支配であるのか? この作品が全編を通じて読者に投げかけてくる命題だと感じました。それは、作中において二度、描写される『飼い犬』の死というシーンが暗示するモチーフでもあります。主人公、浩介はまさしく『人ならざる者』によって飼育される立場へと堕ちてしまい、ゆえに生きることの意義と理由を求め続ける。それがいかに難しいことであったとしても……。そして、物語は浩介の意志と勇気によって、『オーバーロード』たる存在、イブに予想外の行動を起こさせる。
 本作はある意味、古典的なSF作品として分類される「静かなる侵略者」を題材としています。まだ純粋なSF作家であった頃の筒井康隆氏などもこういった作品を手掛けている、非常に伝統的なジャンルであります。そうした、古き良きSFの香りを漂わせる一作であったと評価いたします。

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