静かに心に積もる重み

ホラーというよりは、不思議な物語。

淡々とした文章で描写される日常のなかに、静かに不協和音が混ざり込み、かと思えば異質の固まりがいつの間にか隣で微笑んでいる。
そして訊ねてくるのだ。
「今の生活に満足している?」と。

人物の心情描写が丁寧で、その分、読んでいるうちに胸に重いものが積もってくる。なんとなくもやもやを掻き立てられながら読み進め、少しずつ背中がぞわりとしてくる。

ホラーというよりは、不思議な物語。――だけどやっぱり、なんだか怖い。
そんな物語です。

※※※
以上、作品の連載中に書かせていただいたレビューだったのですが、完結致しましたので加筆させていただきます。

「ホラーというよりは、不思議」「なんだか怖い」と以前書き、確かにその面がこの作品の魅力であると思っていたのですが……途中からの、怖さのシフトチェンジが凄まじいです。
話毎に怖さの種類が変わっていき、読後は背中が間違いなくぞわぞわしているはず。
読み手を知らぬ間に作品の技にかけてくる、まごうことなきホラー作品です。
ぜひ、最後までご覧ください。

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