前方の自然の猛威、後方の無能な味方。己の判断が頼れるか?

2011年にタイ王国を襲った洪水に被災した、日系企業の現地駐在員の方が、当時のご経験をもとに書かれた「企業小説」です。

降り続く雨、ひたひたと押し寄せる暗い水。自宅が被災していく従業員たち。自社の製品と機械を守りながら、自分達の安全も確保しなければならない緊張感。渋滞、不安定なライフライン供給、かかる費用。終わりの見えない不安と疲労。消耗していく気力と体力。味方であるはずの本社担当者の無能……。
次から次へと押し寄せてくる膨大な『敵』に、ひとつひとつ立ち向かっていく主人公達の姿に、胸が熱くなります。

余談ですが、当方、2004年の台風16号による高潮水害で被災しました。自動車は海水にやられて駄目になり、家具も泥だらけ。汚水の強烈なニオイの中、畳や写真を洗ったことを思い出しました。
その時、神戸から来て下さったボランティアの方が、「震災の時、こちらの県の皆さんが助けてくれました。だから、今度は僕らが来ました」と仰っていました。

人を助けるのは人ですね、本当に。

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