古都水没
千葉七星
⚓️🔹 前書き 🔹⚓️
2011年、タイ王国で発生した巨大洪水————
世界銀行の推計では、自然災害による経済損失額の大きさで、東日本大震災、阪神大震災、ハリケーン・カトリーナに次ぐ史上4位であった(2011年、11月17日時点で、推定される被害総額は3462億バーツ約8650億円、であった。)
タイには3100社以上の日系企業が進出しており、とりわけ自動車産業やHDD製造分野においてはアジアにおける主要生産基地となっている。2016年時点で現地日本大使館に在留届が出ている日本人の数は65000人にものぼっている。
(在留届が出ている数であり、実際はもっと住んでいる可能性はある)
2011年七月にタイ東北部に始まった鉄砲水被害による洪水はその後様々な事情を織り込みながら拡大してゆき、首都バンコクまで迫る勢いで広がっていった。十二月にバンコク都知事スクムパン氏による収束宣言が出るまで、中部、バンコク県北摂部の水は約二ヶ月にわたって滞留し続けたのである。最悪期においては中部にある巨大工業団地において水深3mを記録していたとも言われている。そう、当時日本のテレビニュースでも紹介されていたが、完成したばかりの自動車が水にぷかぷか浮かんでいる映像である。
まさに自然の脅威の前に無抵抗に打ちのめされたことを示す映像であった。
政府機関の発表によると、2011年10月18日までには、洪水によって82万4848家族の248万4393人が影響を受けたとみられ、11月5日現在の死亡者数は446人であった。
そしてタイ中部の主要工業団地の七ヶ所が完全冠水したのである。
この物語は、タイ王国に進出している日系企業の日本人駐在員が、この大洪水に会社存亡をかけて戦った大凡100日の記録であり、ほぼノンフィクションでその軌跡を綴り残したものである*(1)
迫り来る水の脅威————。
危機一髪の脱出劇。
一刻も早く工場を再開しなければ、顧客に会社は見捨てられる。
現地法人の社長と若き工場長の百日の戦いが始まった————。
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*(1):本作品は実際にあった事柄をもとに執筆されているが、一部現実には存在しない人物、団体等があることと、フィクションの記述もあることはご了承願いたい。また、本作品は連載途中において改稿する可能性もありますこと、最初にお断り申し上げます。
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