痛風寸前の疲れたおじさんVS人智を超えた海の怪物

生きていく力が尽き果ててしまったおじさんが、すべてを終わらせるためやってきた南国。待っていたのは、四人の若き乙女たちと、正体不明の海の化け物。
そこでおじさん、戦うのです。人生に疲れきっていたはずのおじさんが、見ず知らずの少女たちを助けるために、得体の知れない化け物たちと、ありとあらゆるものを振り絞って力の限り戦うのです!

とんでもなく面白いので、最初の戦いだけでもひとまず読んでみていただきたいです。私はもう、3章を読んだ時点でこの物語から離れられなくなりました。
情け容赦ない恐ろしい敵、臨場感溢れるバトル、手に汗握る心理戦、起死回生の閃き、どこをとっても最高にエキサイティングです!

おじさんは悲しいくらいにただのおじさんなのに、対する敵は超絶ハイスペックで、おじさんはいつだって絶体絶命です。それでもおじさんは少女たちを助けるため、そして護るために、決して諦めません。
そこがとにかくカッコいいのです。戦い方も泥臭くて、なかなかスタイリッシュにはいかない。それでもすっごくカッコいい。
戦いの最中、「弱さは断じて罪などではない。強さが正しさではないように」などの熱い言葉もじゃんじゃん出てきます。おじさん語録を作りたくなっちゃいます。痺れます。カッコいいです。

でもおじさんに惚れ込むほどに、どうしてこんなにカッコいいおじさんが自殺を考えるまでに深く沈み込んでしまったのだろうと、冒頭を思い出し、胸が痛みました。
戦い続けるおじさんの心にも消えない葛藤が渦巻き続けていて、物語には常に、強烈な生と死の匂いが立ち込めています。その濃度がどんどん高まっていく後半にかけてはもう、夢中でひたすらイッキ読みでした。

すべての予定を投げ出しぶっ通しで読み耽りたくなる物語です。究極の没入体験を、皆様もぜひ!!

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