「六人の赤ずきん」書籍化作者の快作! 人生崖っぷち!戦うおっさんの物語

『おじさんが美少女たちを守って戦う物語』
 一言で言ってしまえばそうだけれど、それだけで片づけてしまうのはもったいないぐらい完成度の高いサバイバルアクションワールドの開幕です! おじさんがこの世で最後の、一番楽しくなるはずの思い出を求めてやってきた南の海。しかし、波が静かだったのは、ほんの最初のうちだけ。一発目の危機が訪れたが最後、ラストの試練まで、激しいアップダウンのストーリーが怒濤のごとく続きます。
 すごいなあと思うのは、とにかく次が読めないこと。
「助かった!」→「えっ? 駄目なの?」→「どうするの? どうにもならないんじゃないの?」→思いもかけない逆転劇→「助かった!」……最初に戻る。/読者はその波に乗り、先へ先へとページをめくらされていきます。ほんと、希望が一ミリたりとも見えなくなったりするから、何度もバッドエンドかと思ってしまった。
 ラスボスが登場する『バトルとしてのラスト』と『おじさん自身の心の物語』としてのラストと。最後に用意された二つのシーンも、やはり私ごときの想像では追いつかないものでした。
 あと、戦うおじさんはかっこいいのだけれど、最後まで読んでも頭のなかに浮かぶ彼のイメージは最初の冴えないおっさんのまま、少しもイケメン化して浮かんでこない。その点もまさに作者さんの筆力のなせる技なんだなあと思いました。私などでは、たぶんキャラが変わってしまう。
 あ、もちろん、ハーレムのドキドキ要素もありますよ! 彼を囲むのは、どの一人をとっても個性的で魅力的な美少女たちなので。性描写もありなのですが、この物語では性行為が人間が生きようとする本能、あるいは迸る生命力の象徴のように、私には読めました。
 作者さんが以前カクヨムで書かれていた『六人の赤ずきん』は、ガガガ文庫さんで書籍化され発売中です。それだけの力のある方なので、いろいろ勉強にもなりました。作品そのものとは別に、たとえば文字の表記の仕方や余白の使い方など、あらゆるものを駆使して物語の爆走感を表現されているところは、私にはとても新鮮でした。
 とにかく色々な意味で、読んで損はしない作品です。ぜひぜひぜひ!

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