交じらずに寄り添う、ただ同じ方向へ真っ直ぐ進むだけの、一人と一人の物語

ひょんなことから意気投合して、一つ屋根の下に暮らすこととなった男と女。しかし二人の間に色っぽいやりとりは皆無。
なぜなら男はゲイであり、女はレズビアン。互いの身体に全く興味がなく、それでいて恋愛や対人関係における「普通とは違う」悩みや感覚を共有できる間柄なのです。

それぞれに片想いの相手(同性)がいて、それぞれに浮いたり沈んだり。
だけど家に帰れば、何も取り繕うことなくフラットに接することのできる同居人がいる。この関係性に安心感と信頼感があり、非常に心地よく読み進められました。

脇を固める同僚やお年寄りたちのキャラも立っていて、血の通った人生模様を感じます。
人の数だけ、それぞれの「真っ直ぐ」がある。何かの型に嵌るようなものばかりでなく、誰しもが何かしら歪なものを抱えているのかもしれません。
ゆえに、自然体でただ寄り添い合える渚と夏希の関係性を、とても尊く感じました。

じわっと心に沁みるシーンがあったかと思えば、突然プロレスが始まるなど、展開の緩急も見事。
二人のやりとりが本当に楽しく、永遠に見ていたいと思えるほどで、読み終えるのがすごく惜しかったです。
素晴らしい作品でした。多くの方におすすめしたいです!

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