ここにあるのが幸せのいろは

ひょんなことから捕らえられてしまった孤児、“いろは”。場合によっては重い刑も覚悟しなければならなかった彼女に課された務めは、レディになること!?

そんな彼女の教育係を申しつけられたのは、とある一人の独身貴族男子。慣れない任務に戸惑いながらも、頼りになる周囲の人たちの力を借りて奮闘します。そうしているうちに義務的だった二人の関係は、季節の移り変わりとともに少しずつ変化していくのです。


はじめは“いろは”の成長が微笑ましいのだと思っていたのですが、途中からそうではないことに気付いてきました。成長していたのは“いろは”だけではなく、圭人の方でもあったのです。

お互いのやり取りの中で、お互いに成長していく。成長が成長を呼んでいるような関係性が、恋愛感情を抜きにしてもとても微笑ましく思えました。

どちらがどれだけ良かったというのでなく、「この二人だからこそ」、こんなにも素敵な結末になったのでしょう。


終始、なんだかいい匂いがしているお話でした。それはときにお花であり、スイーツであり、果物であり、ポプリであり。
そんな中、そうした描写がないときも常に醸し出されているものがあります。ずっとそれが何なのか分からなかったのですが、最後まで読んでみると、「もしかしたら…」と思えるものに思い当たるのです。

温かくて、優しくて、すべてを包み込んでくれるような、ほんわりとしたその香りは、最初から最後まで二人のそばを離れませんでした。あれがきっと、幸せというものの香りなのだと思いました。

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