《やっぱり冒険者だ》編

冒険クエストを受け順風満帆スタート。そして大金20000テラス!?

 街へやってきた。


 ザ・中世といった様子の、高い城壁に囲まれた石と煉瓦つくりの町並み。否応なしに、異世界感を盛り上げてくれる。


 喧噪。


 路の両脇には店とテントが立ち並び、色とりどりの野菜や果物、みたこともない品々がならんでいる。ところどころで、なにかを煮焼きしているのだろう煙がたちこめ、まるで縁日のようだ。


 この雰囲気大好きだ。おもわず、おもいっきり息をすいこんでしまう。鼻腔の奥に、さまざまな匂いがとびこんでくる。


 なにがあるのだろう? なにが起こるのだろう? そんなことを想像しただけで、オレはたまらなく愉しい。


 すると、目の前を横切る、プラチナブロンドな女の子。耳が長い!

 おっ、これって……


「うわ、この娘ってエルフ? めっちゃ可愛い」


 ――ポコッ。


「……痛っ」


「……なに、見とれてんのよ」


「いちいちステッキで叩かないでよ……。大丈夫。可愛さなら、プラスちゃんもぜんぜん負けていないから」


「フン、ばっかみたい。さっさと歩く」



 🌠



 そのまま手早く冒険者ギルドに向かい、冒険者の登録(無料で助かった)を済ませた。

 そんで、この街の初心冒険者向けクエストの定番らしい――畑を荒らしているという『ジャイアント・ロウカスト』つまり、巨大バッタ討伐を請け負った。

 ちなみに巨大昆虫系クエストは他にもあったのだが、プラスちゃんが高い報酬につられていた『ジャイアント・マンティス』は、肉食でやばそうなので止めておいた。



 🌠



 オレ達は、冒険者ギルドのおねいさんに書いてもらった地図を片手に、オススメだという道具屋にやってきた。


 こんごの冒険のためにも、いちおうの初期装備を整えたいところだが、もちろんお金がない。なので、オレ達がいまもっているものを道具屋に買い取ってもらい、装備や食事などの活動資金にしようとしている訳だ。


「いらっしゃい」

 小太りのいかにも商人といった主人がいた。みたところズルそうじゃないし、店の感じも整理整頓され素朴で清潔。良心的といった雰囲気なので、すこし安心した。


「もっているアイテムの査定をしてほしいんだけど」


「あいよ、どれだい?」


「うーんと……適当にいろいろ見てもらいたいんだ」


 そういって、カウンターの上にオレらの持ち物を置く。

 と、いってもオレはたいしたものはもっていない。財布にはいった小銭やお札。それにスマホ。あとはベルトとボールペンぐらいか。

 ……まぁ、この中ではスマホだけが希望の星だ。バッテリーがもっているいまのうちは、異世界の人にも感覚的に面白いものと伝わるのでは……と期待している。

 しょうじき数日しのげればいい。あとはギルドのクエストをこなして自活していくしかない。


「ふむ。なんだかわからないけど、どれも見たことも無い品だ……」


「だろ? これはスマホっていうんだけど、ここをタッチすると、なかでうごくんだ――」オレはいくつかのアプリをうごかしたり、入っているアニソンをかけたりする。


「魔法の品かな。小さいのに、こりゃすごいな」


 ちなみに、この世界での通貨の単位は『テラス』。

 冒険者ギルドに隣接された酒場での『泡がおいしい大人の麦ジュース』が一杯1テラスだった。と、いうことはざっくりだけど1テラスは日本円で400円程度と見積もった。


「おっちゃん。はやくしてよね。ボク達お腹ペコペコなんだから」


「ああ、わかっているさ……ん! ちょっと君? こ、これは……」


 道具屋のおっさんがマジ顔になった。その先にあるのはプラスちゃんの胸。


「オレのスマホより薄いだろ。これでも胸なんだぜ……」

 まだ幼さを残す少女といったプラスちゃんは、しかたが無いけど……だれがどうみてもぺったんこ系。


「!? な、なに……ボクがどうかした?」


「ちょっと、見せてはもらえぬか?」


「おのれ! プラスちゃんを辱めるきか! おっさん。まさかロリか! ロリなのか!」


 ――ポコッ。


「……痛ッ」


「ちがうでしょ底辺!」


「いや……ない胸じゃなくて、そこに付けている宝石をみせてはくれないかね?」


 うん……しってた。ちょっとお約束を……。


「……べつにいいけど」


 そういって、プラスちゃんは、自身の魔法少女ちっくなフリフリピンク衣装から、胸飾りを外して道具屋のおっさんに手渡した。リボンや装飾とセットになったピンクの宝石。たしかに綺麗だけど、高いのかな?


「10000でどうじゃ?」


「なんだ10000テラスか……って、ええ! 日本円で400万!!」


「え? え? どういうこと?」とつぜんのことに戸惑うプラスちゃん。


「ダメか? ……なら13000でどうだ」


 ……はい。軽々500万超えましたよ。


「マジでかおっさん!」


「え、え……これは売れないよ」オレと道具屋の顔を交互にみやるプラスちゃん。


「わかった。明日まで時間をくれ……。20000までなら出そう! な? いいだろ?」


 うっわ……やすやすと800万……。おっさんのこの調子だと、まだまだいけるな。1000万は固いな。

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