人は信じることによって不可能を可能にできる生き物
「ほんとうは、女神規定に反しているけど……」
甘えてじゃれついてきていた(オレ主観)プラスちゃんが、おもいつめた表情でそんなことをいう「……最短で魔王を倒すためには、仕方が無いよね」
そういいながら、とりだしたのは、クリスマス商戦で女の子のおもちゃ売り場を席巻してそうな、それ何キュア? っていう感じのファンシーカラーのアイテム。
「この『
「……どこみてんのプラスちゃん」
「ありったけのカードをスキャンして、アンタに複数のチート能力を付与してあげる。ほんとうは身体や精神へのダメージが大きかったりするから複数チートは危――」
「……?」
「き……今日は、いい天気だね。みごとな異世界晴れだね! 異世界ブルーだね! ……それはさておき。感謝してよね、ほんとうは女神規定では転生者1名につき1チートなんだからね!」
「そ、そうなんだ……」なんかひっかかるけど……。
「これでハゲのおっさんもチート能力で、異世界の勇者サマ! これから魔王軍あいてに、ぞんぶんに俺TUEEEEE! ……では、さっそく」
「!? プラスちゃん! ちょっとまった!」
「きゅうに顔色をかえて……な、なに? ……ち、ちょっと顔、近いんだけど」
「……ま、まだ大丈夫だよね?」
「……なにが?」
「禿げていないよね? お、おお……オレ、禿げてないよね?」
「え!? そこ? …………うーんと、だいぶ……きている……かな」
「どこが!!」ガシッと、プラスちゃんの両肩を掴むオレ。
「(――ビクッ)……つ、つむじ?」
「……きていない。断じてきていないのだ! 断じて! あろうはずがない! オレはきていないきていないきていないきて……」
「
「そうだろ? な? こたえてくれ!!」
「………………うん。ボクの見まちがい、かもー」
――パァアア。といった、やさしい笑顔でプラスちゃん。
「ははっ、よくみてくれよな。よかった……。あぶないところだった。事実ではない情報で心がゆらぐと、ありもしない現実が生じてしまう可能性があるからね」
「ナニヲイッテイルノダロウ?」
「オレは信じているんだ。人の意志の力を。人は信じることによって不可能を可能にできる生き物だ。それが誘惑や快楽、時の流れといったものに流されてしまいがちな人という弱い生き物の、抗う力。唯一の強さなんだ。つまり、禿げるか禿げないか? は、その人のもつ意志の力の有無がなにより重要。その中でも、いっそう強い《意志の力》をもった存在。それが――」
「すんごく、いいこといっているっぽいけど……。猛ダッシュで逃避しているだけだよね……そこにある、なにかから」
「――それが、勇者ってもんじゃあ、ないのかな?」
「……キメ顔だけど。全力で勇者をバカにしてるでしょアンタ? しょうじきにいってみて」
「アンタはよしてくれ。くり返すが、オレの名は『
「う……うん。わかったカイト。ゆうこときくから、ほんとうに何もしないでね……。あと……そろそろ、ボクの肩から手をはなしてね……」
「もしくは、親しみを込めて『おにいちゃん』でも可」
「……それは全力でお断りだ」
🌠
「…………」
「どしたのカイト? おもいつめた顔して」
「……あのさプラスちゃん」
「なに?」
「いちおう、かくにんなんだけどさ……」
「きゅうにもじもじして、どしたの?」
「髪が増えたりするカードなんて、あったりしない?」
「そんなん、ねえよーーーーーーー!!!!!!!!」
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