ハイスペック異世界勇者への道筋

「はぁ……アンタの相手してると、話がすすまない」


「くっ……ムリか。ムリなのか。転生は叶っても、女神の力をもってしても……やはりオレの頭髪は。全おっさんの夢『脱減髪だつけんぱつ』は、叶わぬ夢なのか」


「……いや、語感的にあぶないなーその夢。……ボクは、そこスルーするからね、ややこしいのは御免」


「なんでだよ! いまこそ真っ先に取り組むべき社会問題だろ! 真正面からガチでぶつかろうよ。この哀しみを子や孫の代に伝えるわけにはいかないよ。これ以上の悲劇を拡大することは出来ないよ……。こんなの……オレらの代で綺麗さっぱりおわりにするんだ!」 



「やめれ底辺!!!!」



「これ、全おっさんのシリアスな共通課題でしょ?」


「……っうか、全おっさんじゃないとおもう」


「全おっさんだよ! ぜったいに全おっさんなの。全員の共通課題なの! おっさんは、全員仲間なの!」


「なんだ、そのキモチわるい連帯感……」


「ぜったいに全員なんだよ……うう」


「泣かないでよ。……もういいや。こんな底辺は無視して、ちゃっちゃと、ボクだけで話すすめるからね」



 🌠



「この女神『プリティヴィーフレイ・アシュテラス』がもつ『メガミラクルスキャナーMMSドライバーパレット』は『メガミラクルカード(別売り)』を読み込むことで、カードに応じたチート能力を対象者に与えることができるのだ。このカード効果により、どんな生まれついてのダメ底辺も、フィジカル面をふくめたハイスペック異世界勇者に――」


「だから……どこみてんのプラスちゃん」


「って……あれ……あれ? ……カードない」


「なにさがしてんの?」


「カード。ボクの『メガミラクルカード(別売り)』」


「異世界に来るまえに、床に撒いてたじゃん。


「あ…………」


「あのままだとおもうけど」


「は? ……1枚も?」


「うん。1枚も、もってきてない。ぜんぶ床に撒かれたまま」


「――ッ。アンタ! こういうときは目ざとく数枚は握ってきなさいよ! それぐらいの機転を利かせるのが転生者の常識でしょうが! そこから展開する未来があったでしょうが! ったく、ガチで使えないね! だからなにをやってもダメなやつはダメなんだ! このダメ人間!!」


「ちょ……それ、かんぜんに逆ギレ……」


「詰んだ……。もう、おわりだ……もうおわりなんだ」


 ――ペタンと、その場で女の子座りしちゃうプラスちゃん。

 オレの目にはいるミニ&ニーハイ。

 やっぱり、いいネ!(本日2度目)


「……あ……そうだ、お友達。こういうときは女神友達メガトモに相談して…………」


 虚ろな目でスマホをとりだすと、画面をみつめる。


「…………圏外」


 そりゃあそうだろ。電波の届く異世界とかきいたことない。

 そんなの常識でしょうが。


「くあ! クッソ田舎! だから田舎は大キライ!!」


 ――ガシャとスマホを投げつけるプラスちゃん……。

 あーあ、勿体ない。

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