《やっぱり異世界へやってきた》編
目が覚めたら、そこは異世界だった。
目がさめたら、そこは異世界だった。
――キッ。
泣きはらした瞳で、オレをするどく睨む女神『プリティヴィーフレイ・アシュテラス』こと『プラス』ちゃん。
はは、ピンク髪の美少女に睨まれるなんて、ご褒美でしかない。
「うっわ……。こうなったら、このクズ底辺と魔王を倒すしかない……」
「お、まってました王道展開! パチパチパチ」
そう、異世界モノは、きほん魔王を倒すのが定石。
「……ムカつく。なんでアンタそんなに楽しそうなんだ? 緊張感なしか? 不真面目か?」
「アンタって、そんな他人行儀なのはよしてくれ。これからいっしょに冒険する仲間じゃないか。オレの名は――」
「……しってる。『
さすがはオレの女神プラスちゃん。パラパラめくってた冊子に、オレの経歴もろもろが書かれていたのだろう。あの短時間で覚えちゃうとか……ビジュアルだけじゃなく、頭のスペックも高い。
余談だが、オレの名付け親は三重県出身のオレの祖父。海が大好きだったから『
おもしろいのが、知る人ぞ知る航空戦艦『伊勢』の乗務員だったという経歴。「『伊勢』が『伊勢』に乗艦していたんです!」というプチネタなのだが……それはいい。この航空戦艦。戦艦としての大口径砲塔を有しつつ、航空戦力を併せ持つという1粒で2度おいしい、夢のような先覚的コンセプトを実現した世界に稀なる戦闘艦。航空戦艦がなにかは、ググれ!
地味に自慢エピソードなんだけど……飲み会で披露しても、ひとっつも女子ウケはしない。ソースはオレ。
話をもどす――
「オレはなにひとつ心配してない」
「……なんでよ?」
「だって。キミがいるじゃん。女神だ」
「……そうだけど」
「じゃあ、なんとでもなる」
なにせ転生女神が仲間なのだ。これほど心強い展開はあるまい。オレの異世界での勝利は約束された。
「……モンスターと戦闘とかムリ」
わかってる。直接の近接戦闘とかは、捨てモブの筋肉ゴリラ戦士にでも任せればいい。
「でもさ、回復とかできそうじゃん」
「できない」
「援護魔法とかはいけるでしょ? 攻撃力あげたり、防御力あげたり、す早さあげたり」
「しらない」
「……うっわ、地雷」
「誰が地雷だ! このクソ底辺!!」
オレにとびかかってくるプラスちゃん。
罵りながら、ぐいぐい首をしめてくるんだけど。
か細い腕はとうぜん非力。ピンク髪の美少女にそんなことをされるなんて、やっぱり……ご褒美でしかない。
あーなんか幸せだぁ。
「はぁはぁ……なんでコイツ。恍惚の表情なんだ……」
異世界いいわぁ。
プラスちゃんとの、ツンコミニュケーションを堪能していると、オレの心の奥からせりあがる充足感。そんなことをかんじながら、なにげに天を仰ぎ見ると、異世界の空は抜けるように青かった。
――この空は元の世界とは繋がっていないのだ。オレが30数年すごしたあの世界とは……。
そう思ったら、すこしだけセンチメンタル。
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