中華ハードボイルドファンタジー!

 とにかくアクションシーンが凄い! 全編、息つく間もない強烈な迫力で、刃物や鞭が空を切る音まで聞こえてきそうです。映像がありありと思い浮かぶスピード感溢れる描写と共に、時々中国語のセリフ(日本語訳付き)が挟まれるので、あたかも字幕付きのアクション映画を見ているかのような錯覚に陥ります。激しい戦闘シーンが終わった頃には、読んでいるこちら側も緊張感から解き放たれて、はーっと大きく息を吐いてしまいました。

 現代世界と異世界の絡みも面白いです。主人公が異世界と触れるまでの過程にリアル感があり、「異世界転移」という用語を思い浮かべる間もなく、物語に引き込まれます。現代知識を異世界に持ち込む話はよくありますが、この作品では、「現代知識」の使われ方が非常に個性的で、武術にお詳しい古月さまでなければ、このように読み手を驚嘆させる展開を描くことは不可能かと思われます。
 一方、決して武芸に秀でているわけではない主人公が「強いヒロインを助けたい」と思うに至るまでの心情は、説得力を持たせる設定がさりげなく入っていることもあり、とても自然な流れで、ますます好感度大でした。

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