面白さって、いろいろ?
スマホを持つ手はぶるぶる震えた。その先の展開も読めてしまう。
俺が別名義で受賞しているなら「凄いですね!」と話を合わせるだけ。逆に、俺の落選が確認できた場合は、全力で煽ってくるだろう。
詰んだ。
消えたい。
マルヤマ書店から「つまらん」と
部屋の電気を消す。夢の世界に逃げ込もうとする。
しかしスマホが断続的に光る。受信を伝える耳障りな音がブーブーと、何度も何度も。
(電源を落とすしかない)
そんな簡単な事に気づくのすら遅れる始末。
電源ボタン長押し――。
スマホの火が消える直前に表示された次の受信メッセージが、俺の翻意の理由だった。
公開メッセージには、こうして他者が混ざることが出来る。
(くそ、こいつ……!)
姉さんを巻き込んでる!
俺の事は別にいいよ。いや、ホントは良くないけど。
Calc「価値観押し付けないでもらえますか?」
Calc「一歩及ばずでした。でも、全力で書きましたよ?」
予想通りの流れではあった。でも、実際に食らってみると……今すぐこのスマホを叩き割りたい!
そんなタイミングで。
御大「論点ずれてるんじゃないかなぁ?」
ヒーロー見参……に見えた。
御大さんは色々な所で、何度も長編賞を取っていて、その実力は誰もが認める所。論理的で、「正論という拳で殴りつけてくる」タイプの人だ。
そこからは一方的だった。
御大「発端って、面白さの規準の話じゃなかったよね? 自作を卑下する事に対する、考え方の違いが、元々の論点でしょ?」
御大「あと、面白さの定義を共有できてないよね? その状態で議論を続けても、こじれる一方だと思うけど?」
どんどん追い詰められる
結果。
御大「押し付けの定義はなんですか? 逆に言うと、
その一連のやり取りの中、俺は何も出来なかった。
仲間内からは、御大さんに「そうだよね」と、同意のメッセがどんどん投稿された。
おこぼれで、たくさんの励ましが、俺のところにも来た。
「いいじゃん全力で書いたなら」
「改稿して別の所に応募するといいと思います。場所によって好みも違ったりしますし」
「
Calc「ありがとうございます」
と返すのが精一杯だった。
今はとにかく寝たい。今日はもう、誰とも話したくない。
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