ラノベは異世界転移するのに俺は行けないのです。

にぽっくめいきんぐ

プロローグ 鮮魚ラリティ

「「いあいあ! 面白いコンテンツ!」」

 地下空洞に響く声。


 彼らはドローンコプターを背負い、ブレード型のファイルサーバーを抱えて飛翔。いつもの儀式が始まる。


「「いあいあ! 新しい才能!」」

 照明弾により光が生まれた。闇の奥に棲むモノが、彼らには見えたはずだ。マルヤマ書店幹部が「邪神のカケラ」と呼ぶ存在。つまり私。


「尖ったデータは入れたか? 邪神にすら刺さらないのに、読者様に刺さるわけないぞ! みんないくぜ!」

 号令の下、一斉にファイルサーバーを投擲とうてき。フリスビーのように飛び、私に突き刺さる。


「「おおおおおおおお!」」

 彼らは歓声をあげた。一人が、高度を下げながら私に近づき、そして戻って行った。


「異世界転移、確認しました!」


「祈りを捧げよ! 異世界に送ったユーザージェネレーテッドコンテンツ! 作者様の創意の結晶! 素晴らしい物語ノンフィクションへ育つことを! いあいあ! 重版出来じゅうはんしゅったい!」

「「いあいあ! 重版出来じゅうはんしゅったい!」」


「「うおおおおおおおお!」」


 まるで。大手出版社はここまでやる。読者に面白い書籍をお届けする為に。紙出版は右肩下がり。しかし屈するマルヤマ書店ではなかった。


 AIの能力が人のそれを超える技術的特異点「シンギュラリティ」が世間で話題らしい。しかし、彼ら「マルヤマの偉大なる一族」から見れば、周回遅れらしい。


 マルヤマ書店には今――。


 鮮魚ラリティクトゥルフ的特異点が来ていた。

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